無題

作:名無し

過去か未来かもしれない時間、近くて遠いかもしれない場所でのお話。 

「春香ちゃん、プロデューサーが来てますよ」 
「・・・え?あ、うん」 
雪歩の言葉に、俯いて座り込んでいた春香が顔を上げた。 
春香の目が真っ赤なのに雪歩は気が付いた。 
「春香ちゃん・・・泣いてたの?」 
「え・・・うん」 
へへへ、と照れ笑いをして、春香は立ち上がりながら頷いた。
それが雪歩には、とても寂しそうに見えた。 
「今日・・・お別れコンサート、でしたっけ・・・」 
「うん。これでもう、10回目かな。あ、11回目かも」 
指折り数えて、春香はさきほどと同じような、寂しそうな笑顔を向けた。 
「お別れって、寂しいですよね・・・」 
ぽつりと呟いた雪歩に、春香はカラ元気を振り絞ったように、言った。 
「そんなことないって!だってプロデューサーさん、
お別れするたびに、また会いに来てくれたもの。 
 私が、いつかまた迎えに来てくださいって言ったら、
必ずほんとに迎えに来てくれたもの」 
春香の声は、途中から涙声になっていた。 
「だから、今回も笑顔でお別れしなくっちゃ。
きっとプロデューサーさん、私が泣いてたりなんかしたら困っちゃうと思うし。 
 きっときっと、いつかまた、会いに来てくれるもの。
だからそれまでプロデューサーさんが私のこと心配しないでいられるように、
笑顔でお別れしなくっちゃ」 
「・・・春香ちゃん・・・」 
つられて泣き出しそうになる雪歩に、春香は涙を拭いて、笑顔で言った。 
「それじゃ、行って来るね。
雪歩も、私のラストコンサート聞いててね。きっといいライブにするから!」 
顔を上げて元気に駆けだしていった春香の背を、雪歩はぽつんと見送った。 
「バカじゃないの。次なんて、あるワケないじゃない」 


吐き捨てるような声に振り向くと、伊織がいた。 
「アンタも知ってんでしょ。私たちには、もう次なんて無いのよ」 
まるで独り言のように、伊織は雪歩にそう言った。 
「・・・はい」 
「春香もバカみたい。
どうせあの子、いつものようにまたおんなじ約束してくるのよ。
プロデューサーさーん、お願いです〜って」 
「い、伊織ちゃん・・・」 
おろおろと手をぎゅっと握ったまま、雪歩はそれ以上言うことも、何もできずにいた。 
「プロデューサーなんて、嘘つきばっかりよ!」 
「そ、そんなこと無いと思います!」 
吐き捨てるように言った伊織に、震える声で雪歩は返した。
言ってから、途端におどおどと伊織に頭を下げる。 
「・・・あ、ご、ごめんなさいぃ・・・」 
「本当にそう思う?」 
「え?」 
「プロデューサーが嘘つかないなんて、そんなこと本っ気で考えてるの?」 
伊織の強い口調の中に、自嘲気味な響きが混ざっていた。 
「え、だ・・・だって・・・私のプロデューサーさんは、いつも来てくれました。
私が寂しくってメールを出した時にも、それ以外の時にも・・・」 
「じゃあ、明日が終わっても、雪歩は本気でそんなこと言えるわけ?」 
「・・・そ、それは・・・」 
口ごもる雪歩に、矢継ぎ早に伊織はまくし立てた。 
「だいたいアンタのプロデューサーと、私のプロデューサーの、どこが違うって言うのよ。
アイツ、ここんとこ毎日私がメール出してんのに、全然来ないのよ。 
 今までだって、何度だって、私だって、アイツと約束したわ。
でも来ないじゃない!私がこんな気持ちでいるなんて知らないで、
アイツは全然来ないじゃない!」 
「・・・伊織ちゃん・・・」 
思わず伊織の肩にかけようとした雪歩の右手を、伊織は平手で払った。 
「同情なんてやめてよね。かえってみじめになるから」 
何も言えなくなって、雪歩はうなだれた。 
「私だってね、何度もアイツを信じようとしたわ。
私も次がお別れコンサートだから、せいいっぱいのステージを見せようと思って、
こっそり練習だってしてたんだから。 
 これが最後のステージだから、だから私だって、
最高のステージをアイツに見せたくて・・・
でも、私は、誰に見せればいいのよ?どうしてアイツは来ないのよ!?」 
「き、きっと、来てくれますぅ・・・」 
伊織に聞こえるか聞こえないかの、
雪歩の小さな声は、
雪歩をにらむ伊織の視線にかき消された。 


「来るわけ無いじゃない。私はもうあきらめたわ。アンタはどうなのよ?」 
伊織が黙ると、あたりは急に静かになった。遠くから、春香の歌う太陽のジェラシーが聞こえた。 
幸せそうに、一生懸命に、おそらくは涙を必死でこらえて、春香は歌っていた。 
そんな春香を羨ましく思いながら、雪歩は微かに嫉妬している自分の心を必死で押し殺した。 
「わ・・・私は、プロデューサーを・・・信じてます・・・」 
会場から歓声を浴びる春香の姿が、遠くに見えた。 
「信じてたってバカを見るだけよ。どうせ私たちは、明日で終わり。
このでっかい緑の箱ごと、どっかに捨てられて、それっきりよ」 
ラストコンサートを終えた春香は、ガラスの向こうの、
彼女のプロデューサーと最後の話をしていた。 
いつもと同じ、プログラムされたままの会話。 
もう二度とかなうことのない、約束の話。 
「・・・プロデューサー、泣いてます・・・」 
雪歩のいる場所からでもそんな様子が見えた。 
「当たり前でしょ。明日で撤去なんだから。もう二度と・・・会えなくなっちゃうんだから」 
伊織が、いつも持っているウサギの人形をぎゅっと抱きしめた。 
「私には、もうあなただけよ」 
まるで力が抜けてしまったように、伊織はぺたんと座った。 
「ふわふわだって言ってくれたのに。
また触らせてあげるって言ったのに。
・・・何で来てくれないのよ」 
ガラスの上には、最後のスタッフロールが流れていた。もうじき春香が戻ってくる。 
雪歩は伊織に何も声をかけられず、その場を離れた。 
「春香ちゃん、歌、最高でしたよ」 
うつむいたままふらふらと力無くこちらへ歩いてくる春香に、雪歩は笑顔を浮かべて言った。 
春香はその声に、目にいっぱい涙を溜めたくしゃくしゃの顔を上げた。 
「・・・春香ちゃん」 
その声を合図にしたかのように、春香が雪歩にしがみついた。 
「う、うう・・・っ」 
そして、雪歩の胸に顔を埋めて、春香は声を上げて泣き出した。 
「うわぁぁぁぁぁーっ」 


12時が過ぎて、筐体の電源が落とされた。 
賑やかだった辺りは静かになって、暗やみに包まれる。 
少し前・・・まだ雪歩が彼女のプロデューサーと出会う前は、
その闇と静けさに雪歩は安らぎを覚えたものだった。 
しかし今は、単に寂しさと悲しさを増長させるだけでしかなかった。 
「・・・プロデューサー、来てくれないのかな・・・」 
ぼんやりと上を見上げる。 
星も月もない、ただの暗闇。どこまでも広がっているようで、どこまでも何もない。 
「穴掘って、埋まってますぅ・・・」 
腰を下ろして、そんな事を呟いてみた。しかし、どこからも返事は来ない。 
もし本当に穴を掘って埋まったら、少しは気分も落ち着くだろうか。ううん、と雪歩は首を振った。 
雪歩は携帯を取り出して、メールを打った。 
そして、送信ボタンを押そうとして、やめた。ごろんと転がって、手足を伸ばす。 
「・・・プロデューサー」 
闇と静けさに安らぎを覚えなくなってからいつもしているように、雪歩は自分の胸を手で触れた。 
ガラスの向こうで動くプロデューサーの手を思い浮かべて、雪歩は手を動かした。 
「・・・ん、・・・っ」 
普段着の上から、微かなぽっちりとした感触が感じられた。 
雪歩は何回かこの状態のときにプロデューサーに呼ばれて、
プロデューサーにばれないかとドキドキしていた気持ちを思い出した。 
「プロデューサー、私の胸のぽっち、・・・わかりますかぁ・・・?」 
声に出してみるといっそうそこが固くなるのがわかった。 
服のボタンを外して、雪歩はブラをずらした。 
胸に直接触れて、まだ“ひんそー”な自分の胸を触って確かめる。 
「・・・これじゃ、絶対、わかっちゃいますよねぇ・・・」 
とがり始めた乳首を指でつまんで、こりこりといじりだした。 
「く、・・・んっ!」 
雪歩はその刺激に細いあごをのけぞらせた。 
それから、雪歩はいつか、あの大きな手でしてほしいと思っていたこと。 
いつか、大きな胸になったときに、叶えて欲しいと思っていたことを、自分でした。 
両手を胸を覆うように包み込みゆっくりと揉みほぐす。 
「私の胸、どうですかぁ?・・・ぷろでゅーさぁ・・・」 


手のひらの中で、胸のぽっちがますます固くなっていくのがわかった。 
それが自分の手でなかったら、“彼”はどう言っただろう。 
雪歩はその顔を思い浮かべて、ぽつり、と言った。 
「ねえ、・・・プロデューサー。
・・・結局、私の・・・胸。・・・大きく・・・なりませんでしたぁ・・・」 
胸を揉む力が、自分でも知らないうちにだんだんと強くなっていった。 
「ごめんなさい・・・こんな・・・ひんそーで、ひんにゅっ!・・・で・・・っ。
も、もっと・・・大きな胸の子の方が、ぁっ!・・・いい、ですよね・・・っ」 
雪歩の両手は、乱暴に胸を揉みしだいていた。 
「ひっ!・・・ぷっ、ぷろでゅーさぁ・・・っ!わ、私・・・ぃ!」 
その力に胸が形を変えて痛みを感じるたびに、雪歩の胸のぽっちは固くなっていった。 
体の奥から熱いものが湧き出して、それが雪歩の腰のあたりに集まっていく。 
「ごっ・・・ごめんなさいぃ、プロデューサー!私、えっちな子ですぅっ!
い、いつもプロデューサにっ、・・・こうして欲しいって、思ってましたぁ! 
 だ、だからっ、もっと!強くっ!もっと強く・・・いじめてくださぁいっ!」 
雪歩の右手が、ふとももの付け根に伸びた。 
ショーツの上から指でなぞると、指先に湿った感触と、
耳にぴちゃっという水音と、体全体に電気の走るような刺激が伝わった。 
雪歩はショーツの脇から人差し指と中指を指を滑り込ませ、既に潤んだその場所に沈めた。 
「ひうっ!」 
体全体がのけぞって、背筋がぴーんと伸び、カーブを描いた。 
履いていたサンダルは既に脱げてしまい、足の指もぎゅっと握られている。 
雪歩の指は、まるでもう自分の意志で動いているのではないように、
潤みきった雪歩の蜜壺をかき回していた。 
「ぁうぅっ!ぷっ、ぷろでゅーさぁっ!」 
ぐちゅぐちゅと激しい水音が辺りに響いていた。 
「はっ、・・・つよくっ、もっとぐちゃぐちゃ・・・に、してくださいぃっ!」 
不意に雪歩の脳裏に、プロデューサーとのレッスンの様子が思い浮かんだ。 
雪歩は無意識のうちに、こくこくと頷いていた。 
「・・・は、はいぃ・・・っは、はげしくぅ、です、・・・ねっ!?」 
右手で蜜をかき混ぜながら、左手は乳首をぎゅうっと力を込めてつまみ上げる。 


「ぅ、ぅぅっ・・・ぷ、ぷろっ・・・ゅ、さぁっ!」 
雪歩の右手の親指が、雪歩の肉芽を晒しだした。 
親指はぴんぴんと弾くように、肉芽に攻撃を加えた。 
「ひゃん!プロデューサー、そえつよいっ!つよいですぅっ!」 
秘裂の中には薬指と小指を入れて、激しく出し入れする。 
そこから抜いてふやけた人差し指は、親指と一緒に雪歩の肉芽をつまんだ。 
「くぅ・・・あっ!ぷ、ぷろりゅっ!・・・も、もっと・・・もっと、つよくぅっ!」 
のけぞったままの背中が、ガクンガクンと波打ちだした。 
力をこめてせいいっぱい伸びきったふとももが、ぶるぶると痙攣するように揺れていた。 
「・・・ゃ、いやぁっ!やですぅっ!プロデューサー、わっ、わたしぃっ!」 
左手が雪歩の肉芽に伸び、ぐりっと力の限りにつまみ上げた。 
右手は再び蜜壺の中で、まるで中をひっかくようにかき回した。 
「ひぅっ!」 
短い悲鳴をあげて、雪歩の動きが止まった。 
細い肩やふとももは、ぷるぷると小刻みに震えている。 
「ぁ、ぁぅぅ・・・」 
まるで泣き出しそうな声を出して、雪歩の体からぐったりと力が抜けた。 
支えが無くなったかのように、背中がぱたりと床に落ちる。 
くぷ、と水音を出して、雪歩の指が蜜壺から吐き出された。 
「はぁ、はぁ・・・ぁ・・・」 
荒い息をしたままの雪歩の目に、涙が浮かんだ。 
「プロデューサー・・・私、私・・・」 
雪歩はまるで赤ん坊のように丸まって泣き出した。 
「一人はやですぅ・・・」 


雪歩は、膝を抱えてぽつんと座っていた。 
見るとはなしにぼんやりと眺めているガラスの向こうでは、店内の時計が23時を指していた。 
あと1時間で店は閉店し、それからこの箱庭は、ここから運び去られることになる。 
「昨日は・・・ごめん」 
声に顔を上げると、伊織がいた。 
伊織は真っ赤に泣きはらした目をしていた。 
「雪歩に当たっても仕方がないのにね。本当に、ごめんね」 
慌てて雪歩は首を振った。 
「ううん。伊織ちゃんが悪いんじゃないもの。・・・誰も、悪くなんて、ないもの」 
その言葉に、伊織の表情が変わった。 
「悪いヤツならいるわよ〜」 
「・・・え」 
純粋に怒りに満ちた声に、雪歩はびくっと身を引いた。 
「そもそも悪いのはアイツじゃない!諸悪の根元はプロデューサーよ!
みーんな、ア・イ・ツ・が、わ・る・い・の・よっ!」 
まるで手に持ったウサギの人形を握りつぶしてしまいそうな勢いだ。 
「伊織〜!」 
そこへ、満面の笑みを浮かべて春香が走ってきた。 
続けて何か話そうとするが、息が切れて、声にならない。 
「なによっ!」 
怒りの形相で振り向いた伊織の前で、春香は前屈みになって息を整えながら言った。 
「・・・ぷっ、プッ・・・」 
「いいから、落ち着いて喋りなさい!はい、深呼吸!」 
伊織の命令に、春香は素直に従って両手を広げて深呼吸した。 
そして、はたと気付いてまくしたてる。 
「それどころじゃないの!伊織ちゃん!」 
「な、なによ・・・」 
「プロデューサーさんが来てるの!伊織ちゃんのプロデューサーさんが・・・」 
「・・・えっ!?」 
息の詰まったような声だった。
そっぽを向いて腕を組んだ伊織の目に涙が溜まっていくのが、雪歩からも見えた。 
「ふ、ふんっ!い、いっつも遅いのよ、アイツはっ!・・・まったく、しょうがないんだからっ!」 
「良かったね、伊織ちゃん」 
雪歩の目にも、涙が浮かんだ。 
「本当に、良かったぁ・・・」 
「・・・雪歩」 
春香と伊織が、沈んだ顔を見合わせた。 
「あっ、伊織ちゃん!早く行かないとぉ!
プロデューサー、伊織ちゃんの晴れ姿、待ってますよ!」 
「え?あ、ああ。・・・うん!雪歩、見てなさい!
私の一世一代のウルトラゴージャスなスーパーライブ、アンタにも見せてあげるからっ!」 
伊織は涙を拭いて、胸を張って歩き出した。 
それを見送る雪歩の肩に、春香が手を置いた。 
「まだ、時間はあるわよ。雪歩のプロデューサーも、きっと来てくれると思う。ううん。来る。絶対に」 
「・・・うん」 
雪歩は、微笑みながら頷いた。 
口には出せなかった。 
自分には、まだリミットがたくさん残っていた。
だから春香や伊織のようなお別れは、雪歩には、もうできない。 
大歓声の中、笑顔で手を振る伊織の姿が、雪歩にはとても眩しく見えた。 















・・・ 

「・・・あれ?変だな・・・」 
春香が顔を上げた。 
「どうしたの?春香ちゃん」 
「うん。誰かプロデューサーさんが来てるみたいなんだけど・・・なんか変なの。
こんな時間から、はじめてのプロデュースしようとしてるみたい」 
「ええっ?ひょっとしてその人、
今日でこのゲームが無くなっちゃうの、知らないんじゃないですか?」 
うーん、と考え込んだまま、春香は首を捻った。 
「あのガラスのすぐ下に張り紙がしてあるらしいから、
そんな事は無いと思うんだけど・・・あ、あの人、雪歩を選んだみたい」 
「え、ええっ!?わっ、私ですかぁっ!?」 
「行ってきてあげたら?プロデューサーさんが来たら、すぐ教えてあげるから」 
ぽんと背中を叩く春香に、雪歩は自信なさそうに頷いた。 
「え・・・は、・・・はいぃ・・・」 
恐る恐るガラスの前に歩いていって、上を見上げる。 
ガラス越しに、雪歩はプログラムされたとおりのセリフをしゃべろうと口を開く。 
「・・・あっ」 
声にならなかった。 
そんな雪歩を見て、ガラスの向こうで、男は笑顔を見せた。 
一言も発することができない雪歩に、男は衣装を選んで、曲を決めた。 
レッスンも、コミュニケーションも、チュートリアルのオーディションも、
雪歩は何も言えず、うつむいて、ただ泣いているばかりだった。 
無言で時間は流れ、ガラスの向こうの店内から、蛍の光が聞こえた。 
チュートリアルのオーディションは、決められているとおりに、何もしなくても合格だった。 
最後のTV放映のシーンに移り、イントロが流れ出した。 
雪歩はガラスの向こうを見上げた。いつものように、男は、そこで雪歩をじっと見つめていた。 
慌てて涙を拭いて、雪歩はもう一度顔を上げた。 

「プロデューサー!私のせいいっぱいの曲、聞いてください!歌は、“first stage”!」 


おしまい 



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