あずささん小ネタ

作:名無し

 つい二日前、我がプロダクションで、急遽あずささんに仕事のオファーが入り、慌てふためていた。 
 思いがけないラジオ出演で、オファー後即の打ち合わせは実に長時間にも渡って行われた。 
 無理もない話ではあるが、急過ぎたので番組担当のディレクターも眠い目を擦って、俺との打ち合わせに付き合って頂いた。 
 そもそも、是非とも三浦あずさを、という言葉が信じられなかったが、とにかく仕事があるのは有難い。 
 あずささんにも、無理を言いつつ前日真夜中に自宅から迎え、そのままスタジオにまで来て貰った。 
 そして、当日。 
 放映は無事収録完了となり、ディレクターは急な申し出で済まなかったと律儀に頭を下げてくれた。 
 だが、俺の方もクタクタとなり、その後行く予定だった『飲み』の方もお流れとなった。 
 それ以前に俺は未成年のプロデューサーだ。大っぴらに飲みには行けない。 
 そして、そんな日の帰りのバスだった。 
 律儀するとは思うが、ディレクターはわざわざロケバス一台手配し、プロダクションまでの帰路を取ってくれた。 
 忙しいご時世だと言うのに、これではこちらが恐縮してしまう。 
 スタジオとディレクターから解放され、収録成功の安堵感で俺は座席につくも、五分も経たない内に遠い世界に旅立ったようだ。 
 このラジオ収録の仕事の前にも、他のアイドルの子の仕事の話で持ちきりだったのだ。 
 何日徹夜したかも、うろ覚えだ。帰りなのだ。寝ても罰はあたらないだろう。 


(うう……ちょっと……酔ったかも〜) 
 夜通しでラジオ番組の収録を終わった私とプロデューサーさん。 
 真夜中に突然、起こされたのはびっくりしましたけれども、お仕事だったので何とか私も起きることができました〜。 
 始めは、部屋に泥棒さんが入ってきたのかと思いましたけれども、よく見たらプロデューサーさんで、もう一回びっくりしました〜。 
 だって、とらたんは外なんだから入ってこれないですし、普通は泥棒さんだって思いますよね〜? 
 でも、いきなり明かりをつけて、手をパンパン鳴らすような起こし方は私、どうかと思いますよ〜。 
 お陰で、私は帰りのバスで酔っちゃいましたし……なので、酔い覚ましにプロデューサーさんにお話に付き合ってもらいましょう〜。 
 ほんの少し揺れるバスの中で、後ろの方の席に座っていた私はプロデューサーさんの座る真ん中の座席に向かいました。 
「ぷろでゅー……あら」 
 ほんの少し緩んだ顔で、プロデューサーさんの座席を覗き込むと、そこにはクタっとうな垂れているプロデューサーさんの姿がありました〜。 
 一目でグッスリ眠っているんですね〜って分かるくらいに口を開けて、それはもう心地良さそうでした。 
 お話に付き合って貰えない不満で、ほんの少しつまらなかったですけど、プロデューサーさんの寝顔……。 
 うふふ、あどけない顔♪ 
 収録前、番組のディレクターさんと打ち合わせしていた時は、あんなに引き締まった顔をしてなさったのに。 
 スーツ姿に似合わない寝顔を眺めつつ、私はふとして、ある事を忘れていました。 
(そうだった……年下なんですね〜) 
 あんなに年の離れた人といっつも仕事の話をして、その雰囲気にそのまま飲まれて彼の実年齢を忘れていました。 
 私よりも年下なのに、あんなにきびきびと働いていらっしゃって〜。 
 それがこんな寝顔をなさるだなんて……母性本能がくすぐられちゃいます〜。 
「うふふ……可愛い……」 
 起こすのが勿体無いくらい可愛い寝顔。 
 そっと自分の席に戻ろうした時、私はふと目に付いた物に、そのまま釘付けになってしまいました〜。 
 プロデューサーさんの開いている口元から垂れているよだれ。 
 放っておくと、床にまで落ちちゃうんじゃないかと思うくらいでした〜。 
 これはよくないですね〜、拭ってあげましょう〜。 
「ハンカチはどこかしら〜。ないですね〜……あっ」 
 うっかりしてしまって、今日は私、ハンカチを忘れてしまったみたいです。 
 いけませんね〜忘れ物は〜。 
 でも〜……ないものは仕方ないですよね? 
 私は、キョロキョロとバス内を見渡して、他の誰かがこちらを見てないことを確かめました。 

「ふふ……失礼します……」 
 プロデューサーさんの肩にそっと手を置き、息をかけないようにそーっと顔を近づける私。 
 私が舌を這わせれば、そこのプロデューサーさんの口元。垂れていたよだれを、そのまま拭い取ります。 
 んーでも〜一回じゃ、なかなか綺麗に取れませんね〜? 
  
 ぺろ……ぺろ……ぺろ…… 

 私、下手なんでしょうか〜。 
 何回か舐めてようやく、プロデューサーさんの口元からよだれが拭えました〜。 
 でも、ちょっとプロデューサーさんの味も楽しめて悪くないかも、です。うふふ♪ 
 プロデューサーさんは起きてないようですし、大成功です〜。 
 私は満足気に彼から離れると、乗り物酔いも忘れて自分の席に戻りました。 


 俺は目を覚ましていた。だが、あずささんが不意に俺の席に来たから何となく起きにくかった。 
 半分狸寝入りで、あずささんが戻られてから起きようと思ったが、あんな事をされるとは……。 
 途中からは緊張で震えを誤魔化すのに必死だった。 
 運転手の他にアシが一人乗っているロケバスだと言うのに、あずささん……あなたって人は。 
 まあ、彼女があんな行動をさせるようにしてしまったキッカケを作ってしまったのは他でもない俺自身なのだが。 
 元はそんなつもりじゃなくて、勢いで……。 
「プロデューサーさん、お目覚めですか〜?」 
「わわっ、あずささん!」 
「後ろから、頭が動いてるのが見えたので、もしやと思ったのですが……うふふ」 
 何故、あずささんは、そんなに満足しているのかも分からず、自然と俺の隣に腰掛けたのだ。 
 不覚にも、俺はドキっとしてしまったが、表には見せない努力は怠らない。 
「どうしたんです、あずささん? 夜通しで疲れたでしょう」 
「ええ、そうなんですけれども……ちょっと予定を、確認したくて〜」 
 予定というキーワードと共に、スーツの内ポケットから手帳を取り出した。 
 忙しい仕事の中、手放す事は叶わない俺のスケジュール手帳だ。 
「ああ、あずささんの今後の予定は……」 
 言うが否や、あずささんは手帳を持つ俺の手を取った。 
 あれ?と思いつつも、あずささんはふるふると首を振り、俺の行動を緩和的に否定した。 
「私のではなくてですね〜。プロデューサーさんのご予定です〜」 
「俺の、ですか? と言いましても明日には春香と千早のレコーディング準備の立会いですし……」 
 彼女が意図を掴めてなかったのか、あずささんはちょっとむくれた顔をした。 
 そんな顔でさえ、思わず可愛いと思った自分の思考をまず呪った。 
「そうではありません〜。プロデューサーさんのお休みのご予定です〜。二週間後くらいには取れると伺っていますけどれも〜」 
「ああ、休みのですか。そうですね、今月の24日は休めそうです」 
「あら、本当ですか〜? では、ではですね〜」 
 見るからにあずささんの瞳が輝いている。分かりやすい人だ。 
 そして、分かりやすい程に頬を赤く染めた彼女は、はにかんだ表情で俺を見据えた。 
「取り合えず、お休みの前日はそのまま私の家に来て下さい〜。それで、お休みに何をするか一緒に考えましょう〜」 
「あずささん、仕事が入るかもしれないんですよ。そんな安易に……」 
「ダメなんですか〜?」 
 再び、むくれた彼女の顔。いや、さっきのよりも結構むくれていた。 

「え、えっとですね……」 
「ダメなんですか〜〜〜〜?」 
「ほら、俺はプロデューサーで、あずささん以外の子も……」 
「今は私と一緒ですよね〜〜? どうして、他の子の話が出てくるのでしょうね〜〜〜〜?」 
 この時ばかりは、あずささんの語尾を伸ばす調子が怖く感じられる。 
 いつの間にか迫るに迫った俺とあずささんの距離。目線を合わすだけで恥ずかしくもある。 
 そして、腕に当たっている彼女の豊満な胸。 
 いつもそうだ。この人は反則だ。 
「ダメなんですか〜〜〜〜〜〜〜?」 
「……必ず休みます。楽しみにしてますよ」 
「うふふ♪ 私も楽しみです。あ、家に来る時は勝手に上がって頂いて構いませんからね〜」 
 演技かと思えるくらい不機嫌な様子は消え、すぐさま彼女の顔に乗るのは満足気な気持ち。 
 あずささんは、席を離れると言葉の代わりに、俺の頬に軽く口付けをしてくれた。 
 あずささんが自分の席に戻った直後、俺は窓を見据え、ため息をつく。 
 そして、自分の甘さと女性への免疫力の無さを恨んだのであった。 
(勝手に上がってて下さい、か……) 
 俺は、そんな彼女の言葉を思い返しつつ、小さなキーケースをポケットから取り出した。 
 その中には鍵が四本ある。 
 一本は事務所の鍵。もう一本は自宅の古びたアパートの鍵。もう一本は愛車の鍵だ。 
 そして、残るもう一本は……。 
(いいのかな……良くないよな……) 
 まあ、今回の仕事であずささんを深夜に叩き起こすという荒行を実行するには『コレ』が役に立った訳だが。 
 しかし、まさか女性から合鍵を渡されるなどと誰が予想したことか。 
 全ては『アレ』がキッカケだが、今更どう修正していいのか分からない。 
 何よりも自分が、あずささんとこんな関係になっても嬉しくいる時点で終わっていると思う。 
 とにかく、世間は元よりもプロダクション内の誰にもこの事は言えない。 
 でも、そんな堅苦しい事も、あずささんの笑顔でフッと忘れてしまう。 
「プロデューサーさん、着きましたよ〜!」 
「おおうっ!」 
 考えにふけってしまい、誰から声をかけられたかも確認せずに俺は鍵を慌てて隠した。 
 そして、振り返って見れば、年上のアイドルがそこに微笑んでいた。 
 今、彼女は世間のアイドルで、俺はそのプロデューサーだ。 
 だが、しばらくしたら、そんな関係は変わっているのかもしれない。 
「プロデューサーさ〜ん」 
 バスを降りた俺を呼ぶあずささんの顔はやっぱり綺麗だった。 
 そうだ。いつだって、彼女は綺麗だ。 


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