無題

作:名無し

朽ちかけた三階建てのビルの前で、一人の少女がほうきを持って掃除に励んで 
いる。高槻やよいという名で、いささか家庭に問題があるような無いような、微妙な 
ポジションに居つつも、元気だけはやたらと有り余っている少女だった。やよいは 
ビルの三階にある芸能プロダクションに所属するアイドルの卵。今の所、良いプロ 
デューサーに巡りあえず、冷や飯食いの真っ最中だ。 

「GO MY WAY、GO 前へ〜」 
脱力系の歌を口ずさみつつ、ほうきを翻すやよい。通行人に埃を被せようが小石 
をぶつけようが、まったくお構い無しだった。 
「はあ・・・どのメーカーも課金、課金で、嫌になっちゃう」 
バグの修正もろくにやらず、課金に目を血走らせるソフト屋にそろそろ嫌気がさし 
てきたやよいは、やはり合併は間違いではなかったかと思っている。 

玩具屋と的屋とでは、所詮、毛並みが違う。やよいはベスト版でさえもバグ修正を 
施さぬメーカーに、疑問を抱いていた。 
「360も凶箱と同じ運命かな・・・」 
キャリバー2の為にDCを買った人間もいるというのに、メーカーの冷淡さはどうだ 
ろう。夢と散った白くてコンパクトなあのハード、そして、あのやたらと大きくて重た 
いハードを、やよいは懐かしむ。出しただけまし、いや、もっとソフトを出していれば 
・・・など、思いは様々に巡るが、今となっては後の祭り。国破れて山河ありという 
所だった。 

言いたい事は山ほどあれど、今のやよいにはトップアイドルを目指すという思いが 
ある。その為にはどのような事も辞さないつもりだった。四週に渡ってやけに臭い 
マウスパッドをおまけにつけたファンブックの事も今は忘れたい。朝ご飯を制する 
者は業界を制する。やよいはそんな気がしていた。 


765プロダクションは表向き、真っ当な芸能プロダクションの体をなしているが、 
その実、裏ではかなりきわどい事を行っているのは業界内で有名だった。 
社長の高木はやり手で、年端もゆかぬ少女を食い物にするような男だった。や 
よいも例外ではなく、家庭の事情が複雑なのを良い事に、売春婦まがいの売り 
込みをさせられている。今日はそのオーディションがある日だった。 

「よろしくお願いします」 
薄暗い部屋に設えられた段上に、見目美しい少女たちが一列に並んでいる。皆、 
十代で美しい者ばかりだった。やよいも列の真ん中でスポットライトを浴びている。 
「それでは落札を開始します」 
高木がマイクを持って、落札者を煽る。少女たちからは見えないが、闇の中に 
悪意を持った眼がいくつも光っていた。 

ほとんど人身売買に近い催しだった。少女たちはここで落札され、一晩、飼われ 
たり、目にするのも汚らわしいビデオの主演女優となる。それらは外部へは絶対 
に漏れない構造となっており、ある意味、選ばれた人間にしか与えられない特権 
だった。 

「高槻やよい、百二十万円で落札です」 
その言葉にやよいは慄いた。求められる行為は値段に比例する為、高額であれ 
ばあるほど、落札者からおぞましい事を望まれる場合が多い。二百万円の高値 
がついたある少女は、その晩、夜通し犬と交わらせられたという。その姿は映像 
に収められ、どこかの好事家の手中にあるらしいが、世に出回る事は無かった。 
ちなみに噂では、犬と交わった少女は、如月千早という話だが、やよいに真偽を 
確かめる術は無い。 


「頑張ってくれたまえ」 
高木に見送られてやよいは車に乗った。これから一晩、誰とも知らぬ相手と褥を 
共にしなければならない。どのような辱めを受けるのだろう、無事に帰る事が出来 
るのだろうか、などと考えると、気が気ではない。なにせ、百二十万円という高値が 
ついたのだ。とても普通の行為を求められるとは思えない。 

(塊魂の歌、凄すぎ。特に歌手の面々が・・・) 
車窓から街並みを見るやよいの目に涙が光る。まるで自分が奴隷のようだと思っ 
た。自分を落札したのは醜い老人で、異様に目をぎらつかせていた。車に同乗す 
るなり、やよいのむっちりとした太ももに手をおき、撫で擦り始めている。 

(こんなおじいさんに抱かれるのか) 
祖父と孫ほども年の離れた男女が、ひとつになるというのは異常な話だった。しか 
し、やよいに拒否権は無い。元気だけが取り得の彼女も、流石に意気消沈してい 
た。 
(そういえば、DCで出たのはただのキャリバーだった。2はマルチだったな。ハード 
ごとに隠しキャラを変えて、意気込みが凄かった・・・) 
闇が濃くなってきて、やよいの乗った車を包み込む。街には人が溢れているが、誰 
もが虚ろな目をしていた。 

(キャリバー3はメモカのバグで大変だったな・・・) 
いつになったらゆめりあ2は出るのだろう。やよいはそんな事を考えながら、早く 
良いプロデューサーに出会える事を願っていた。 



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