もってけ!ワンダースーツ

作:微えろP

■ 

「ふむ……普段の歌声は問題無しだな……さすが千早というべきか」 

千早と呼ばれた女性が薄暗い部屋で歌っている。 
それを傍らで見ているのは、スーツの男性……彼女の歌声をチェックしつつ、 
同時に表情やステップなど、数々の項目に注意を払っている。 

「だが、大切なのはここからだ」 
男は、彼女の背後に回りこみ、両手で腹部に触れ、さするように上下に動かした。 
「あっ……ぷ、プロデューサー……」 
「声の響きと身体の振動を見るんだ……続けなさい。集中力を切らさずに」 

多少のくすぐったさを我慢して、千早は歌い続ける。 
しかし、プロデューサーと呼ばれた男の手は、腹部からだんだん位置を上に上げて…… 

「きゃっ……あ、あっ……そ、そこっ……胸……」 
「続けろと言ったはずだよ。それとも、千早の歌にかける集中力は、この程度かい?」 
「……っ……」 
歌に関してはプライドのある彼女のこと。胸を触られるという動揺を隠し切れないのは事実だが、 
プロデューサーの手を無視して、さらに彼女は歌い続けた。 
「いいかい千早……本物の歌手というのは、ステージ上でライトが消えようが、 
機材がトラブろうが、歌い終わるまでは気を抜いちゃいけない…… 
そう、たとえこんな風になっても……ね」 
プロデューサーの手が下半身に伸びたかと思うと、荘厳なデザインの衣装をめくり上げた。 

黒いケープとドレス状のスカートが特徴的な衣装(正式名称はゴシックプリンセスというらしい)の 
スカートがめくれ上がり、おへその辺りまでが丸見えになり、下着越しの股間が露になった。 
黒いドレスと白い肌……そこに青のショーツが丁度良いコントラストとなってひとつの芸術品となる。 
ある程度見せることを意識しているのか、リボンやレースをふんだんに使った下着が目にまぶしい。 
プロデューサーは右手でスカートをめくり上げたまま、左手の指で彼女の股間に触れ、 
大事な場所の割れ目に沿って上下に動かした。 

「ひゃっ……あ、あぁ……プロデューサーっ……」 
「続けるんだ。レッスンはまだ終わりじゃないぞ」 

注意されてなんとか意識を歌に集中させようとする千早だが、こんなところを触られながら 
歌うというのもちょっと無理がある。 
彼の指が股間を往復するたびに、歌に甘い喘ぎが混じり、腰はガクガクと震えはじめた。 

「パンツが湿ってきたね……歌いながら、何を考えているんだい?」 
プロデューサーの指はなおもしつこく千早の股間を往復し、時には力を込めて割れ目に押し付ける。 
ショーツの股間部分はどんどん染みができ、その色を一段濃く染めていった。 
「見られて感じているのかな……千早はえっちな娘だね」 
「……」 

プロデューサーの指摘に頬を真っ赤に染めながらも、歌を止める事はできない。 
下半身を濡らしながらも、今の彼女にできることは、今の曲を歌いきることだけだった。 
しかし、プロデューサーが無事歌い終わるまで大人しくしているわけも無く、 
背中のファスナーを下ろし、胸から下のドレス部分を脱がしにかかっていた。 

元々、ストラップの無いタイプのドレスなので、一つの戒めを解いてしまえばあとは苦も無く 
脱がされるばかりであり、衣装がストンと落ちると同時に、千早はケープを残して、 
あっという間に下着姿にされてしまった。 

ドレスと同じくストラップの無い、チューブトップタイプのブラからは、 
割と程度のいいふくらみを持った胸が感じられ、さっきの黒を基調とした服装から、 
青を中心とした下着姿へと変貌する様はちょっとした手品のようにも見えた。 
「……そうそう。そんなアクシデントにも負けないような精神力が必要なんだ」 
そう言うプロデューサーだが、どう見てもレッスンにかこつけてセクハラをしているようにしか思えない。 
右手はいつの間にか千早の胸をブラジャー越しにまさぐり、左手はショーツの中に入れ、 
直接大事な部分を派手な音を立てていじっていた。 

「あっ……あぁ……も、もう……許して……プロデューサー…」 
「ランクAの道……諦めるかい?」 
「そ、それは……イヤ………ですぅ……」 
「なら、頑張らなきゃね。それに、まだまだこれからだよ」 

乳首が充分に勃っている事を確認したプロデューサーは、器用に片手でブラのホックを外し、 
千早の胸をはっきりと見えるように露出させた。 
大きいとは言わないまでも、そこそこのボリュームを誇る胸が見えると同時に、 
薄暗い部屋に明かりがつき、千早の胸をくっきりと映し出した。 

「ふふふ……やはり千早はステージライトに照らされると一段と輝くね。 
しかも、こんなにえっちな格好で……お客さんの前に出てみたら、どうなるかなぁ?」 
「や、やめてくださいっ!?そんな恥ずかしいことっ……」 
「でも、身体は喜んでるみたいだよ。ほら。もうあそこがこんなに……」 

左手をショーツから出すと、先ほど点いたばかりのライトに反射し、千早の大事な場所から 
溢れ出したと思われる液体が、糸を引きながらプロデューサーの指に絡みついている。 
「ほら……そろそろ、歌より欲しいものができちゃったんじゃないかな……?」 
あえてプロデューサーは一旦手を止め、千早にある種の期待感を持たせるような表情で腕を組み、 
そのまま距離を取ってさっきの指を舐めた。 

「そ、それは……」 
「して欲しかったら、ちゃんとその綺麗な声で言わなきゃねぇ………」 
「あ、あうぅ……」 

ケープの下は、もはやショーツ一枚のあられもない姿で、もじもじと恥じらう千早。 
いつのまにか恥ずかしい部分からは液体が溢れ、ふとももを伝って膝へと落ちていく。 
「……願い……ます……」 
「おや?いつもの千早にあるまじき声だね。歌も声もはっきりと……ほら」 

「……っ、お……お願いします。もっと……わたしの恥ずかしいあそこ、触って…… 
そして、プロデューサーの太いおちんちん……わたしのなかに……入れてください!!」 
「はい、良くできました……それじゃ、次のレッスンとして、俺のアレを受け止めながら、 
可愛い声を出す訓練だ。俺が突くリズムに合わせて、可愛く鳴いてくれよな……」 
「は、はいっ……あ、あっ……やぁ……ふぁっ…………っ、いやっ……」 
「ふふふ……こんなに濡れて……本当に千早はいやらしい娘だ。それじゃ、 
もう濡れちゃったパンツは脱がして、あそこを見せてもらおうかな」 

プロデューサーは下着越しになおも千早の大事な部分を弄りながら、 
ゆっくりとショーツのサイドに手をかけて下ろして行った…… 


■ 

「……っざけんなっ!!」 

一応周りに被害が出ないことを確認しながら、俺はプラスチックのDVDケースを、 
資料室の絨毯に叩き付けた。 
勿論、一番萎えるシーンの前でリモコンで停止ボタンは押してある。 

【衝撃映像!!トップシンガー如日千早セクハラ&レイプ!!強制中出しファ●ク】 
……はっきり言って、ひねりも品性の欠片も無いタイトルだ。 
有名になるにしたがって、こんな作品も出てくるであろう事は覚悟していたが…… 
それにしたって酷すぎる。 
だいたい千早はこんなに胸が大きくないぞ!! 

「………………って、突っ込むところはそっこじゃない。落ち着け、俺……」 
畜生、うかつにもあまりの素材の悪さに我を忘れてしまったじゃないか。 
それに最初は【まぁ、軽い気持ちで千早がどう見られているか気になるし】なんて風に、 
ちょっとだけ見て笑ってやろうと心に決めていたのに……何なんだこれは。 

まず、第一に素材が悪い。 
レッスン中にセクハラなんて、今時ありがち過ぎて逆に誰もやらねぇよ!! 
唐草模様の風呂敷を背負ってほっかむりをして、ドロボウ髭をはやして街を歩くようなもんだ。 
それをまぁ、ここまでお約束たっぷりだと逆に笑いしか起きないぞ。 

それに、企画モノってのはどうしてこうも女優の素材が悪いのかね。 
……まぁ、最近はAVの質も向上して、トップクラスの女優は昔と比べ物にならないくらい 
お綺麗なお姉さん方になってはいるが…… 
愛も変わらずアイドルのそっくりさん企画モノはハズレというか、下手をすればモンスターに遭遇する。 
とりあえず俺が担当する少女、如月千早のそっくりさんAV……つまり今、手元にあるコレで推察すると、 
このニセモノ(そっくりさんとはとても言えない)モンスターとは行かずとも、 
このしゃくれアゴはちょっとカンベンして欲しい。千早の劣化バージョンとはいえ限度があるだろう!! 
歌は全然上手く無いし、演技は下手だし、背は低いし……千早のそっくりを自称するなら、 
せめてルックスとスタイル、そして歌くらいは気を配って欲しいものだ。 
胸も普通だし。 

そしてとどめにこのしゃくれアゴときたら……全裸にする前にスイッチを切りたくなる、 
この俺の気持ちも分かってもらえると思う。 

だが、一番腹が立つのはそんな真っ赤な偽者に、さっきまで股間をおっきくしていた俺だ!! 
女優やセットの質の悪さはともかく、ベタ極まりない企画でも、ちょっと千早に対して 
やってみたいと思ってしまったじゃないか!! 

ボーカルレッスンと称して、千早の歌に対するプライドを煽りながら触りたい放題。 
そしてだんだんと千早の甘い声がスタジオにこだまして…… 
そんなうらやましい企画を、こんな……と言っては女優さんに失礼かもしれないが、 
千早より一桁劣る素材で(しかも、たぶん年齢は一回りくらい上なんだろうな) 
実行されたことに腹が立つ。 

……とはいえ、この監督がどんな風に千早(のそっくりさん)を料理したいのか、 
後のレイプ編までは見てからでも遅く無いだろう。叩き割ってしまうのは。 
そう思うと、俺はふたたびリモコンを取って再生ボタンを押そうとすると…… 

「おや、珍しいね資料室にいるとは……」 
「うおわっ!?」 

どうやら怒りに我を忘れて気づかなかったが、社長が入ってきたらしい。 
俺は慌てて停止スイッチを押すと、まだ元気な股間を目立たせないように社長に向き直った。 
「しゃ、社長……おはようございます。社長こそ、こんなところに何の用事で?」 
「うむ、今日はちょっと夕方から出掛けるのでね……戸締りをキミに頼みたくて探していたのだ」 
「わかりました。しっかりやってきますからご安心を」 
「うむ、よろしく頼むよ……お?そのDVDは……」 

やはりというか何と言うか、社長はめざとく千早のそっくりさんAVを見つけてしまった。 
ここで慌てるのもみっともないし、俺は一部を隠してありのままを説明した。 

「……というわけで、こんなけしからんエロDVDがどんなに酷いものかと思って……」 
「ふむ。それなら遠慮せず私に言ってくれれば無駄なお金を使わずとも良いのに」 
「はぁ!?」 
一瞬、俺は社長の行っている意味が分からなかった。 

「夕方まで、多少時間があるな。よし、ちょっと付き合いたまえ。キミに見せたいものがある。 
……ただし、律子君や小鳥君には黙っていると約束できるかね?」 
「……わかりました。俺も男です……覚悟を決めます」 
なんだかとてつもないものを見せられる予感はしたが。虎穴に入らずんば虎児を得ず。 
6割の恐怖と4割の期待に挟まれつつ、俺は社長についていった。 

■ 

給料日とランクアップ、そしてユニットの結成と引退…… 
そんな時くらいしかお目にかかれない社長室。 
「しかし、さっきのDVDはわたしも見たが……なかなか良かったな」 
「社長……本物のアイドルを預かる事務所の社長がそんな事言っていいんですか!?」 
「まぁ落ち着きたまえ。確かに法律上褒められたモノではないし、女優さんの質も、 
……まぁ……その、何だ…………実にアレだが、やろうとしている事は良く分かる」 

はっきり言って意外だった。 
こんなものを見たら、普通社長は怒ると思うだろう? 
『うちの大事なアイドルに対して、こんなにけしからん妄想を抱いているとは!!』なんて。 

「……詳しくはおいおい説明するが。うちはアイドル事務所だ」 
「はい」 
「そして、水着写真集なども売り出すこともあるし、アイドルに対する性的な部分を 
アピールして、世間に売っている……それも否定できない」 
「……はい」 
「すなわち、人気が出るに比例して、あのような作品が出るのもまた必然だ。 
なぜなら、わが社の性的規定を言ってみたまえ」 

俺も仕事なのでしっかり覚えている。わが社の規定。 
それは、TVなどの出演に当たって、どこまで見せられるかという会社の方針で、 
その内容によって取れる仕事の質が違ってくる。 
「……ヌードNG、下着NG、水着はOK、ドッキリOKです」 
「うむ。まぁおおまかにそんな感じだ。当然、男性ファンはそれ以上を望むだろう?」 

そりゃそうだ。俺だって春香や千早、あずささんの………なところは見たくてしょうがない。 
「しかしわが社はそれはしない。彼女達のプライベートもあるからね。 
そんな、どうしようもないファンの欲望がそういう作品を生み出すものだ」 
「だからと言って、肯定する気には……」 
「まぁ、キミもまだまだ若いし、その考えも否定しない。だが、結論はもう少し待ちたまえ。 
とりあえずはこういうものがあるのだと、知ってからでも遅くない」 

スライド式本棚の一部を空け、ある本を戸棚に入れると……俺は一瞬自分の目を疑った。 
昔のカラクリ屋敷みたいに、本棚全体がスライドし、奥に扉のようなものが見えたのだから。 

「かつては私も、キミのようにニセモノAVに腹を立てていたものだ…… 
だがね、ある日……ちょいと考えるところがあって、色々研究するうちに分かったこともある。 
キミもそろそろ敏腕と呼ばれる立場になったことだし、見せてあげてもいいと判断した」 
社長は隠し扉を開け、中に入り、手招きで『キミも来たまえ』と合図を送った。 

社長の集めた、20年以上の歴史とも言える研究資料………プロデューサーとして、是非とも見ておきたい。 
無論、毒になる部分もあるだろうが、それくらいのリスクは承知の上だ。 
俺は、深呼吸を一つして気分を落ち着けると、社長に続いてその隠し部屋へと脚を踏み入れた。 


■ 


「うわぁ……」 
社長が部屋の電気をつけると、そこには6畳くらいのスペースに詰まった本やDVDがぎっしり。 
しかも、正規のルートで流通してないと思われるものも大量にある。 
仕事上、担当アイドルの出ている作品や番組のテープなどは俺も保存しているが、社長のは桁が違う。 
しかも、さっき見た千早のそっくりさんエロDVDをはじめ、わが765プロのアイドル達をモデルにした 
エロ作品群がこんなにたくさん存在するなんて、俺もはじめて見たぞ。 

「如月君がトップランクに上がってからは、こちらの作品も発行ペースが凄くてね…集めるのも一苦労だよ」 
言われてみれば……数や種類の多さはランクに比例して増えているようだ。 
かと思えば、律子を題材にした作品は固定支持層がいるようで、定期発行されているっぽい。 
「何より、こういった商売は人間の欲望がストレートに出る世界なのでね。 
時にはこういったモノ達が、開発のヒントをくれたりするものだ……勿論、本物を売り出す側としては 
あまりおおっぴらにやられると困るのだがね」 
「……」 

社長の説明を聞きながら俺は、はじめて見る明らかに765プロのアイドル達を元ネタにした、 
お下劣な作品群のあらゆるものに目を走らせ、おおざっぱにチェックしていた。 

【掘っても埋めないで下さい……荻原雪歩・ドリル・アナル・シャベル】 

【給食費だけはやめて!!高規やよいのいけないあわあわアルバイト】 

【爆乳天使〜アイドルは未亡人〜】 

【眼鏡ぶっかけ240分SP】 

【調教日誌〜高飛車お嬢様が堕ちるまで〜】 

【枕営業の日々〜凡庸なアイドルが生き残る道〜】 

この辺は、悔しいが個々のキャラクターを良く分かっている奴が作っているような気がする。 
しかし、皆わが社のアイドル達が抱えるコンプレックスに対して容赦が無いな。 
感心はするが、監督本人がここにいたら小一時間問い詰めたい気もするぞ。 
名前も、苗字を一文字変えるだけという大変あざといやり方だ。 
目の悪い人が遠くから見たら間違える事まで狙っての事だろうな……マジで腹が立つぞ。 
かと思えば、 

【陵辱痴漢電車スペシャル!!バスト差19センチを誇るアイドル二人の陵辱ショー。 
黒髪の大和撫子が白い液体にまみれる!!限界ギリギリモザイクは必見!!】 

【オンナだらけの水着運動会。騎馬戦では水着の脱がしあいで全裸に!! 
アイドル衣装が水に濡れてスケスケ。限界を超えた大勝負】 

【犬娘獣姦。あの有名シンガーを全裸にして首輪をつけて白昼散歩!! 
コンビニ、公園……電柱でのお漏らしプレイなど3時間収録】 

【アイドル空手家VSレイプ魔。疲労と共に空手着を一枚づつ剥ぎ取られ、 
最後はしおらしい声で泣き叫ぶ……最後は潮を吹いて失神!!】 

この辺は、多分監督本人がやりたい事ありきで、後からうちのアイドル達を当て込んだ気がする。 
しかも、アイドル本人の名前をあえて出さずにシチュエーションで押してくるやり方がかなりいやらしい。 
……しかしタイトルに忠実に本人の欲望が出ているあたり、社長も的確な事を言うなぁ。 
俺も正直、これに出るアイドルが本物だったら是非やりた……って、 
いかんいかん、俺は彼女達をトップに導き、幸せにするのが仕事のプロデューサーじゃないか!! 

……それにしても、本当に色々な方面でわが社のアイドル達も使われているんだなぁ…… 
全部あわせて100本以上あるんじゃないだろうか? 
ちゃんとケースやパッケージを作ってある作品はそのうち半分くらい。 
残りはただのDVDーRにタイトルを書いただけというのもある。 

【『腰取り物語〜手取り足取り教えてプロデューサー〜』主演:星野美紀】 

【『放課後IDOLVision〜友達に噂されると恥ずかしい秘め事〜』主演:水瀬詩織】 

うーむ……画像が無いと妙に想像力を掻き立てられて、自分好みのシチュに補完されそうだ。 
……が、こういうバルク感丸出しのAVは、モンスターに遭遇する率もきわめて高いんだよ。 
股間を握ったまま、あまりのモンスターっぷりにどうしていいか分からないが何度あったことか。 
デッキに入れて再生するまでの期待感が高まっている分、落差で地獄を見るんだこれが。 


「その辺はまだまだ序の口だよ。こちらのスクラップコレクションも見てみるかね?」 
そう言えば、この部屋にはきちんとパッケージングされているものが少ない。 
大部分が社長が取り出したようなスクラップブックやクリアファイルに入っている…… 
俺は、社長から受け取った大き目のスクラップブックを手に取ると、おもむろに開いてみたんだが 

「うおっ……こ、これ……風俗の……いわゆる、ピンクチラシって奴ですよね?」 
しおりや付箋くらいの、大部分は文字のみで埋め尽くされたピンクチラシ。 
そこには【双海●美ロリロリローションプレイ:30分\9000~】などと書かれたものから、 

【三浦あ●ささんと母乳絞りプレイしてみませんか?】 
【伊●様に踏まれたい貴方に!!女王様と下僕プレイ】 
【如月●早のアナルにプラグが!?ドキドキロボ審判で触りまくり】 

など、文字情報のみでピンサロだか性感マッサージかイメクラか全く分からない、 
謎のチラシ郡が数百枚ほど挟まっていた。 
かと思えば、コレは多分、宅配ビデオの広告だろう。 
スーパーの安売りチラシみたいなレイアウトだが、羅列されている単語は下品極まりなく、 
下半身に直結するようなストレートえろワードに、俺の脳はどうにかなりそうだった。 

【あの星丼美希がアソコを晒す!!超お下品な90分濃厚撮影ショー】 
【何も知らない三浦あずきさん。男湯とは知らずに……】 
【やゆいちゃんのツルツルな○○○!!無修正が流出】 
【誰もが見たかった!!知性派アイドルが獣になる瞬間、絡みまくりの360分】 
【おち●ちんなんて付いてません!!菊池真のオナニー隠し撮り】 

「……ひねりも何もあったもんじゃないな……」 
「はっはっはっ、それは違うぞキミ。限られたスペースに、どれだけの内容を詰め込むかを考えたら、 
ストレートに扇情的な言葉を使うしか無いと私は思うがね…… 
こういうものは、第一にどこまでファンを【その気にさせるか】がキーになるのだよ」 
「そう。そしてデッキに入れて再生してから、強烈な自己嫌悪に陥るんですよね……」 
「うむ。そうだろうそうだろう……ほとんどの作品は、自らが作り出した脳内妄想に勝てないものだよ。 
それだけ【期待感】という力は大きいのだ。そして、そこで気づくことは何かね?」 

何だか、順序良く誘導されているような気がするが……ここはあえて乗っておこう。 
俺だって、こんなニセモノの向こう側にヒントがあるものなら知りたいし。 
「そうですね……好きなアイドルのあられもない姿が見たいという欲求と期待感が、 
必要以上の脳内ブーストをかけているから思わず買ってしまう…… 
そして、実際のギャップにショックを受けつつ、アレでナニするかは、本人の 
期待値と意志の強さに拠るといったところでしょうか」 

「ふむ……まぁ、完全に当たりとは言えんが、期待感という点はその通りだ。 
わが社は無論、大事なアイドル達にそんなにいやらしい事はさせん。 
しかしだ。キミは本気で惚れた女性の裸を見たいとは思わんのかね?」 
「見たいです!!」 

隠し部屋に社長と二人きり。こんな場所で嘘をついてもしょうがない。 
プロデューサーとして、担当アイドルに対してえろ妄想というのは職業上まずいのだが、 
男として惚れた女の裸を見たく無いかと言われて【いいえ】と言う奴などいないと思ったので、 
俺は会話のリズムを損なう事無く即答した。 

「では、ファンのそんな健全な欲求に、765プロとしてはどう応えるかね?」 
「ぐっ……それは……」 

765プロには、さっき言った規定があるし、規定以上のサービスをするつもりは……無い。 
美希やあずささんが、予想外のアクシデントでサービス過剰になる時はあるが、 
こちらから要求してそんな事をさせているわけではないのだ、断じて!! 
そんな事をしたら悪徳記者のいいカモだし、彼女達のプライベートが破壊されてしまう。 
プロデューサーとしても実に複雑な心境だが、そんな事までしてファンを増やそうとは思わないし…… 
かと言って、このAVみたいな事など出来るはずも無い。 

「おっと……そう怖い顔をしないでくれたまえ。私とて彼女達に無理をさせるつもりは無い。 
別に何をしなくてはいけないとか、そう言う事を言ってるわけではないのだ。 
ただ、ファンの性的な欲求は否定せず、こういったものも、表立って賛成とは言わずとも、 
【けしからん】の一言で切り捨てるのは、あまりに勿体無い。 
それに……製作者にも敬意を持たなくてはいかんと思うのだ。 
例えば、キミが見ていた如月君っぽい女性ののAVがあっただろう?」 
「見てたって事は社長、結構まえからいたんですね」 

「ウォッホン!!……あー……まぁ、そんな事は置いといてだ。 
女優さんの質は確かにアレだが、企画やコンセプト自体はどうだね?」 
そんな社長の発言に、俺は驚いた。 
確かに女優の顔がアレだったり、年がアレだったり、胸が大きかったり、 
声が萎えるほどアレだったりだが、企画意図や千早に対する責め方はツボだったから。 
千早のことが大好きで、よく分かっている監督さんが撮ったんだろうが、 
女優に関しては、マジで予算が無かったのだろう。お気の毒に…… 

「すごく……良いものだと思いました。俺もできるなら千早にあんな……おっと!!」 
そこまで言いかけて、思わず口を塞いだ。 
いくら男としての本能でも、765プロの社員として、言っていい事と悪いことがある。 

「うむ。本来なら減給モノの発言だが聞かなかったことにしてあげよう。 
私の言わんとしている事も分かってもらえたようだしね。 
私はそろそろ出かけるが、良かったらしばらくこの資料庫を漁りながら考えてみたまえ。 
出るときはオートロックだから、忘れ物の無いようにな。 
あと、社長室に入ってこないとは思うが、律子君や小鳥君に見つからんように、な。 
では、事務所全体の戸締りは頼んだよ」 
「ありがとうございます。お気をつけて」 


社長を見送った後、俺はそのまま無数に散らばるエロ資料と向き合った。 
確かに、社長の言うとおり【ファンの性的な欲求】がストレートに乗っているのが、 
こういったそっくりさんAVなんだろうな。 
言い換えればニーズの塊であり、売る側にとって最高に分かりやすい意思表示だ。 

「こっちの、薄っぺらい本のカタマリは……うお、これ……漫画か!? 
しかも、これ……伊織だよな?こっちは雪歩、そしてあずささん……」 

そういえば、【同人誌】というものがあったよな……商業ベースに乗せられないような、 
漫画やイラストを個人で出版して、即売会で売るというイベントがあると聞いたことがある。 
こっちで言うところの、インディーズCDみたいなものだろうか? 
しかし……絵も上手いし、漫画なのに春香や美希だと一目で分かるものばかりだ。 
これは、きっと描き手の人がうちのアイドルたちを良く把握しているという証拠だろう。 

特にこの、伊織が怖い職業の人に薬を打たれて、いいように弄ばれるストーリー漫画。 
これは、読んですごくエロいと思うんだが……なんと言うか、身につまされるものがある。 
わが765プロを、指先一つで潰してしまえるような偉い人が伊織に目をつけたら…… 
俺もこの漫画のように、伊織に対して何も出来ないのだろうか? 
……エロ本を読んでいるはずなのに、何故か心が重い…… 

こっちは……エロではないみたいだな。お?俺が担当する千早の話だ。 
ふむふむ……律子が千早をプロデュースしている設定か……よく考えるなぁ。 
しかも、昔は二人でデュオを組んでいて……ヤバイ、こっちも泣ける話だ。 
この漫画家さん凄いなぁ……うちでオフィシャル契約したいくらいだ。 

法律やら著作権やら、表向きで反対する事は出来る。 
しかし、この人たちがうちのアイドル達に寄せる想い……それは誰にも止められないんだ。 
たとえいかがわしい表現だろうと、作品の芯に【心】があるものは……本気で尊敬できる。 
もっとも、中にはあからさまに安易な金儲けを狙った粗悪なものも結構あった。 
名前とビジュアルだけ似せて、アイドルの内面を全く分かっていない粗悪品。 
真がスポーツドリンクを好んで飲んでるなんてありえないし。 
スポーツ万能だからって、イメージだけで撮っているんだろうな。 
……もっとも俺も、イメージだけで見て痛い目にあったから知ってるんだけど。 

確かに、ニセモノ……いや、2次創作にもいろいろあるみたいだな。 
見もしないで反対するのは勿体無い……むしろ、この中にプロデュースのヒントが隠れている。 
社長が隠し部屋を造ってでもコレクションするわけだ。 
いくら凄いヒントとはいえ、女性陣に見せていいもんじゃないからな。 
「よし。今日はもう少し篭って読んでみようか。千早関係のエロ資料は……と」 

俺は、もうすぐ帰ってくるであろうアイドル達を思って時計に注意しながら、 
担当アイドルをファン達がどんな風に見ているか、そしてどんな事をしたいのか、 
それを探るために再び資料の山に戦いを挑み始めた。 


■ 

〜SIDE VIEW〜 

おやつの時間を少々過ぎたくらいの頃。 
待ち合わせにはだいぶ余裕のある時刻だが、彼はそわそわと落ち着きが無い。 
駅前の噴水には、同じ待ち合わせであろう若い男女、サラリーマン…… 
この中に紛れるには、白髪交じりの彼の姿は少々目立つようだ。 

しかし、そんな事を気にする様子も無く、彼はキョロキョロと当たりを見回し続けている。 
その手に、一通の封書を持ちながら。 
ピンク色の封筒には手紙が一枚。そこにある文面は彼しか知らないが、 
どうやら今日、ここに来るようにと呼び出したのはその封書の差出人であろう。 

噴水の上に備え付けられた時計の長針が【5】の字に差し掛かる前に、その人物は来た。 
まだ30分以上も余裕を残しながらも、彼の姿を発見したら走ってきて、 

「……きゃっ!?」 
転びそうになりながら、なんとかバランスを取って持ち直し、 
冷汗をかいている彼の元へ駆け寄った。 
「だ、大丈夫かね……相変わらず無茶をする……」 
彼の腕に抱きとめられ、安心しているのは……年齢不詳の女性。 
落ち着いた大人の雰囲気を醸し出しながらも、危なっかしい様子はまるで、 
今デビュー間もない、リボンの似合うあの娘にも似ている。 

「はぁ、はぁ……お久しぶりです、プロデューサーさんっ♪」 
声も可愛らしく、ますます年齢が分からない。 
しかしながら、こんな美女がそろそろ老年期にさしかかるような黒の似合う紳士と、 
どんな関係なのだろうか? 
おそらくは先ほどの【プロデューサー】という単語が関係しているのだろうが。 

「まぁ、まずは挨拶から……だったね。久しぶりだ、神田君……綺麗になったね」 
「ええ、本当に……お久しぶりです。プロデューサーさんったら、褒めるのが上手いですよね。 
もう、今日はどんなオーディションもドンと来い!!ですよっ♪……なーんちゃって」 

どこかで見たような挨拶の風景。それは、20年も前の事だった…… 


■つづく。 




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