モノクロ

作:◆yHhcvqAd4.

 「今日呼び出したのには、ある重大な用があってな」 
 社長室の椅子がギィときしんだ。 
 昨日、事務所でパソコンにかじりついていた俺に社長が伝えた用件、いったい何なのだろうか。 
 てっきり俺だけが呼び出されたのかと思っていたら、引退コンサートを行って現在休業中の真も呼び出されていた。 
 「これを見てくれたまえ」 
 社長はそう言うと、机の一角に無造作に置かれた2箱ほどのダンボール箱を指差した。 
 「それは・・・?」 
 「菊地くんへのファンレターだよ。ほぼ全ての手紙に、同じようなことが書いてある」 
 見てもいいですか?と社長に確認を取り、箱の中から一枚の封筒を手に取った。 
 『マコっちゃんがもう見られなくなっちゃうなんて寂しいです!ファンの前に戻ってきてー!!』 
 そんな内容から続く手紙にひとしきり目を通すと、再び社長に向き直った。 
 「社長、もしかしてこれ・・・全部・・・?」 
 社長は黙って首を縦に振った。 
 「一年という短い活動期間の中でこれだけの反響が出たのは我が社始まって以来でな。
どうだろう。キミ達さえ良ければ、ユニットの活動を再開してもらいたいのだが」 
 活動再開。思ってもみなかった社長からの言葉だった。 
 「社長、それは本当ですか?しかし、活動を再開するにしてはまだ時期が早すぎるのでは・・・?」 
 「その通りだ。だから本格的にメディアの前に姿を現すのはもうしばらく後だな。
それまでは、アイドルの更なる実力アップに努めてもらいたい。生まれ変わった新しい菊地真を、世の中に披露するのだ」 
 「新しい、菊地真・・・」 
 「彼、あぁいや彼女のプロデュースはキミに任せるのが適任だと思ってな。引き受けてくれるかね?」 
 頬が緩みそうだった。 
 「私としては喜んで引き受けさせていただきたいです。真にも話をして、それから返事をするという事で宜しいですか?」 
 「勿論だ」 
 「分かりました、では・・・」 
 「うむ。彼女と連絡を取ってみてくれたまえ」 
 「はい、失礼します」 
 ドアを閉め終わった俺は、飛び上がりたい気持ちだった。
訳が分からないぐらいテンションが上がって、鼻息が荒くなったのを自分でも感じていた。 


 「ええぇぇぇっっ!?それ、ホントですかっ!?」 
 真に連絡を取ったらすぐに事務所へ来てくれたので、直接伝えた所、
事務所の外にまで響くような大声で特大のリアクションを返してくれた。 
 「あぁ。メディアへの露出は当分後になるだろうし、しばらくは取材も無いと思うけどな」 
 「やっ、やります!ボクやります!」 
 胸倉を掴むのではないかという勢いで、真が俺のジャケットを摘んだ。力強い返事が心地よく鼓膜を叩いた。 
 「やった!またプロデューサーと一緒だぁ」 
 「お、おい真」 
 抱きつきそうになった真の額に人差し指を当てて制止した。 
 「ちょっと我慢。な?」 
 「あっ・・・は、はい」 
 真は何かを思い出したようにハッとして、申し訳なさそうにごめんなさいと言った。 
 でも、その嬉しそうな気持ちは俺にもよく分かる。というか俺も嬉しい。 
 「じゃあ、早速社長に報告に行こうか」 
 「はい!」 
 いい返事が返ってくるだろうなと期待はしていたが、だいたいその読みどおりだった。 

 「そうか、二人とも乗り気でよかったよ」 
 社長が朗らかに笑った。 
 「では、これから活動を再開するにあたってやって欲しい事があってだな」 
 「はい、何でしょうか」 
 「それはだな・・・」 

 ―――――――――― 

 今、俺と真は現地で合流した撮影スタッフと共にとある海辺の街にいる。
社長から受けた指示は、『今後の活動のための映像の撮り溜め』だった。 
 近場で済ませられるものが大半だったが、一箇所だけロケ地での撮影にかかる費用を経費で出してくれるとの事だったので、
真と相談した結果、ロケ地は海辺にしようと決まった。 
 撮影スタッフの撮った映像以外にも何か使えるものができれば、と思い、俺も一応自分のビデオカメラを持ってきていた。 
 しかし、俺のカメラを使うようなことも無く、強めの日差しの中撮影は無事に終了し、
後はホテルに泊まって明日の昼にはチェックアウトして東京に戻ることになる。 
 久しぶりに真の水着姿を見たが・・・やっぱりボーイッシュだった。
女性ファンの更なる獲得を目指しつつ、男性ファンの数も増やそうと目標を立ててはみたものの、
どういったプロデュースをしていくかはまだ考えていなかった。 
 まぁ、準備する時間はある。今はまだ、以前のような忙しさに追われているわけではないのだから。 
 これからのことに思考を巡らせていた所に、コンコンとノックの音が耳に入った。 
 ドアを開けると、真が立っていた。 
 「こんばんは。へへ・・・遊びにきちゃいました」 
 初めて見る格好だった。 
 白いワンピースに、踵の少し高いサンダル。黒い髪とのシンプルなモノトーンだが、シンプルであるが故のピュアな姿だった。 
 「珍しいな、ワンピースなんて」 
 入り口で立ち話というのも何なので、部屋に招きいれた。散らかしてなくてよかった。 
 「友達と買いに行ったんです。最近、女の子っぽい服買ってもうるさく言われなくなったんですよ。
これを着た姿を父さんと母さんに見せてみたら、母さんが大喜びしてて。それできっと父さんも何か感じてくれたんだと思うんです」 
 嬉しそうに真は言った。娘にとって母親というのは大きな味方だろう。 
 それにしても、真の父親の気持ちも分からないでもない。なんというか意表を突かれた感が強いが、よく似合っている。 
 真の線の細さがよく出ているし、残念ながらボリュームには欠けるが、胸元も中々大胆なデザインだ。
何より、スカートからすらりと伸びた両脚がやけに目立つ。
左の手首には皮のブレスレット、左の足首にはシルバーのアンクレットをはめていた。 
「海・・・見に行きませんか?外の風涼しくて気持ちいいんですよ」 
 上から下まで眺めていた俺の視線に気づいたのか、ほんのりと頬を染めながら真が提案してきた。 
 こんな時間に見に行っても昼間の青さは見れないだろうが、夜の海というのもそれはそれでミステリアスな印象があるだろう、
と思いつつ、部屋のキーを持って、携帯電話を左ポケットに突っ込んで、俺たちはホテルを出ることにした。 


 夏も終わりになろうかという時期、昼と夜とではまるで別世界のようだ。 
 人通りや強い陽射しでザワついている昼間とは対照的に、涼しい風と鈴虫の透明な鳴き声が通り過ぎていくだけの静かな夜。 
 その静けさと薄暗さを楽しむかのように、俺と真は何も言わずに人通りの少ない砂浜への下り道を歩いていた。 
 ザッ、ザッという足音がこの静寂の邪魔をしているようで、何だか申し訳ない気持ちになってしまう。 
 「・・・」 
 さっきから歩みを進める度に、俺の右手に真の手の甲や指先がこつんと当たる。 
 ちらりと右側に視線を見やると、ほんの一瞬だけ真と目が合った。 
 「!!」 
 手を繋ぎたいのだろうか、と思った俺は、真の手を握った。
手の中で指先が動揺する感触があったが、すぐに指を絡めて握り返してきた。 
 ほんの始めはひんやりとしていたが、握り締めると真の体温が手の奥から伝わってきた。 
 あの引退コンサートの日以来、俺と真はお互いの時間が空いてる時を見つけてプライベートで会うようになった。 
 あれをしたい、これをしたいという『女の子』のご要望に応えて、出来る範囲でやれる事をやってきた。 
 何しろ真は有名人だ。あまり人目につく場所で公然と遊ぶのは少々よろしくない。 
 手を繋ぎたいだのハグしたいだの、そういったリクエストに答えることが出来るのはこういう人気の無い場所ぐらいだ。 
 「あ、着きましたね」 
 坂を下り終えると、波の音が耳に入った。
この辺りはもう街灯も立っていなくて、周りがかろうじて見えるのは空に浮かぶ月のおかげだ。 
 砂浜に誰かに置き去りにされたレジャーシートを見つけて、そこに腰掛けることにした。 
 一定の間隔で打ち寄せる波の音が心地よくて、なんだか落ち着いてくる。
人間が波の音を聞いて落ち着くのは、太古の昔の記憶が遺伝子に残っているからだ、なんていう話を聞いたことがあるのを思い出した。 
 隣に座った真は青白い月光に照らされて、白のワンピースと白い肌とぼんやりと輝かせているようだった。 
 その横顔に儚さのようなものを感じて、俺は視線を外すことが出来なかった。 

  
 「そうだ、プロデューサー」 
 「ん、何だ?」 
 「えっと・・・まだ感想聞いてなかったですよね。どうですか?この格好・・・ボクに似合います?」 
 期待しているような視線が真っ直ぐこちらに向いた。 
 「ああ。こんなに真に似合うとは思わなかったな。可愛いぞ、真」 
 「へへっ、やーりぃ!」 
 いつもよりも数段女の子らしい格好をしている真だが、ガッツポーズを作ってとても少年くさく喜ぶ姿は、
どんな格好でも真は真だ、と再認識させてくれた。 
 「そうだな、今日の撮影もこの格好で・・・」 
 言いかけて、俺は突然、何だかそれは嫌だな、と思って言葉に詰まった。何故だろう。 
 「うーん、正直言っちゃうと、この姿は、その」 
 真がモジモジしながら目線を下げた。続きは何となく察しがつくのだが、焦らずに待った。 
 「もう両親には見せちゃいましたけど、プ、プロデューサーにだけ・・・見て欲しいなって」 
 なんともいじらしい事を言ってくれる。 
 「・・・俺もだ。他の男には見せたくない」 
 真は自分の姿を見せるのが仕事なアイドルなのに、独占欲なんて幼稚すぎると自分で失笑しそうだった。 
 「う、うん。アイドルとしてのボクはファンの皆の物ですけど・・・女の子としてのボクは、プロデューサーのものですから」 
 隣に座った身体がもたれかかってきた。俺と真の間に漂う空気が甘いものに変わっていくのを感じる。 
 俺はこういう甘ったるい雰囲気は気恥ずかしくなってしまうから少し苦手なのだが、
真はこのムードに酔っているようで、「言っちゃった」などと漏らし、恍惚とした表情で遠くを見つめていた。 


 ファンの中で『貴公子』やら『真さま』などと呼ばれる真のこういう姿は、未だかつてメディアに露出したことはない。 
 中性的でハキハキした、男性らしさすら漂わせる爽やかなキャラクターが菊地真の魅力として通っているからだ。
そのおかげで、女性アイドルとしては他に類を見ない数の女性ファンを抱えている。 
 いつもそういった『アイドル菊地真』の姿を見ていたし、また俺自身がそのプロデュースを務めている。
だからこそ、こういった乙女チックな姿を見せられると、ついドキっとしてしまう。 
 ファンを魅了する女の子が俺の目に魅力的に映らないわけがないのだ。 
 「・・・・・」 
 それにしても、下半身はスカートになっているのに膝を立てて座るとは、なんて無防備なんだろうか。 
 スカートの生地は重力に引かれて少し開いた膝から腰に向かって滑り落ちていて、
膝の表側を見ようとするとかなり際どい所まで見えてしまっている。 
 真がまだボケーっとしているのを確認すると、俺は視線を膝から下へと落としていった。 
 傷一つ無い真っ白な脛の裏に隠れるようにして、思っていたよりも肉付きのいい腿が腰に向かって伸びている。 
 その根元は…かろうじてスカート部分の生地に覆われていて見えないが、腿からお尻への丸みを帯びた曲線は剥き出しになっていた。 
 真は胸より脚だな、とか、何色なんだろう、とか、その奥にあるのはやっぱり・・・などと、
思考がどんどんヒワイな方向に行ってしまうのを、「それはダメだ!」と強く心に念じて追い払った。 
 「・・・うぅ」 
 俺が平常心に戻ろうと自分に喝を入れていたその時、真の身体がぶるぶると震えた。 
 気が付けば、風が少し強くなってきた。涼しい気温の中で薄着でいて寒くなってきたのかもしれない。 
 「寒い?」 
 と尋ねると、真は頷いた。時計を確認すると、もうそろそろ戻った方がいい頃合だった。 
 戻ろうか、と一言かけて、俺たちはホテルに戻ることにした。 
 帰り道、手を繋ぐ代わりに腕にしがみついていた真の体温は、行きよりも冷たくなっていたような気がした。  

 何となくの流れで再び俺の部屋に戻り、途中で買ってきたジュースの缶を真に手渡して、俺も同じ物のプルタブを引いた。 
 「あ、かんぱーい。へへへ」 
 「ん」 
 コツン、と薄いアルミ同士のぶつかる音を合図に、ぐびぐびと冷たいジュースを喉に流し込んでいく。 
 ベッドの上でまた体育座りをしている真に、さっきの砂浜での1シーンがフラッシュバックさせられ、目のやり場に困ってしまう。 
 一瞬、白っぽいのが見えたような気がしないでも無いが、分かってやってるのか、知らずにやっているのか。 
 俺だって健康な若い男だから、とは言え、担当アイドルの生脚を見てムラムラ来つつあるこの状況はマズイ。
スカートぐらい営業で履いていたこともあったじゃないか。いったいどうしてしまったんだ、俺は。 
 ふつふつと胸の奥が熱くなってくるのを誤魔化すかのように、俺は缶に入った液体を一気に飲み干した。 
 空になった缶をテーブルに置くと、丁度真も飲み干した所らしく、1テンポ置いた所で同じような乾いた音を立てた。 
 「あ、そうだ」 
 ふと、携帯電話の電池が切れかけていた事を思い出し、
枕元に放り出してある充電器のコネクタに繋ごうと椅子を立ったその時だった。 
 「おわっ!?」 
 「うわっ!!」 
 床で足を滑らせてしまい、ベッドに突っ込む形で倒れこんでしまった。
柔らかいマットが二人分の体重を受けて深く沈みこみ、ギシィときしんだ。 
 「わ、悪い真、大丈夫か?」 
 突然足を滑らせて、不可抗力とはいえ真を押し倒してしまったわけであり、上になって組み敷いているわけであり。 
 なんてベタな、と思いながらも柔らかい感触と女の子の匂いに思考能力を奪われかけ、
先ほどからのモヤモヤした気分も災いして次に起こすべき行動を即座に実行できずにいた。 
 「すまん真、すぐどくから・・・ッ!?」 
 2、3秒遅れて身体を起こそうとした所を、背中に回ってきた真の両腕に引き止められてしまった。 


 「・・・・・・」 
 真は何も言わなかった。ただ、俺の背中に回した両腕にグッと力を込めただけで。 
 「ま、真?」 
 この距離を逃すまいと、真はガッチリと俺の背中をホールドしていた。 
 「あ、あのな。俺も一応世間一般では若い男性とカテゴライズされる訳でだな、この態勢はよろしくないと思うわけだ。
その・・・何をするか」 
 「・・・いいですよ、ボク。プロデューサーになら、何をされたって・・・」 
 何を、とはぐらかしてはいるが、それは『真もこの状況を分かってやっている』ということだった。 
 「真、冗談じゃ済まされ―――」 
 「ボクじゃ・・・ダメですか?」 
 「えっ?」 
 「分かってます。ボクはアイドルだから、ボクに何かあったらマズイから、プロデューサーはとっても大事にしてくれる。
それは分かってます。だけど・・・」 
 「真・・・」 
 「だけど・・・ボクみたいな子じゃ、その気にはなりませんか・・・?」 
 直接顔は見えないが、湿り気を帯びた息遣いと訴えかけるような口調から、自分が女だというプライドと、真の必死さが伺えた。 
 そしてそれは、救済を求める祈り人の訴えのようでもあった。 
 「ボク・・・胸も無いし、髪も短いし、あぐらかいて座るし、やっぱり・・・それでも・・・」 
 真の声が震えている。アバラが押しつぶされたかのように、胸が苦しい。 
 「わ、わかった。もういいから」 
 ベッドに真が俺にしているように、俺も真の背中に腕を回して、細い身体を抱き寄せた。 
 「悪かった」 
 一言だけそう言って、ショートカットの髪に指を滑り込ませて撫でた。 
 「後悔しないか?」 
 まだ涙目の真の瞳がまっすぐに俺を見つめた。 
 「はい。後悔なんてしません」 
 「えっと、・・・痛い・・・と思うぞ」 
 「大丈夫です。プロデューサーと一緒なら・・・怖いものなんてありません」 
 「真」 


 その健気な言葉にたまらない愛おしさを感じて、俺は力加減もせずに真を強く抱きしめた。
しかし、真は痛いとも言わずに、息を軽く吐いただけで、強すぎる抱擁に身を任せていた。 
 親指と人差し指で顎を軽く押さえると、そのサインの意味を理解したのか、真が目を閉じて軽く唇を突き出した。 
 そのまま唇で唇に触れ、強引と分かっていながらも舌を割り込ませた。
流されるままに真の上下の顎は閉じられる事無く、俺の舌は侵入を果たした。 
 「んんっ!ン・・・」 
 顎の骨を伝わって、真が鼻から声を漏らしたのが分かった。
もうしばらく、柔らかい舌とねっとりした口内の粘膜を堪能させていただこう。 
 「はっ・・・あ」 
 押さえつけていた唇を離すと、真が顔を真っ赤にしてぷいと横を向いてしまった。
いきなり強引過ぎたかな、と思いつつも、その姿が可愛くて、顎を掴んでこっちを向かせ、今度はソフトにキスをした。 
 「脱がすぞ」 
 肩紐に指を引っ掛け、俺は焦る気持ちを抑えて、真の白いワンピースを脱がしにかかった。 
 「あ・・プロデューサー・・・」 
 返事は聞かなかった。どっちみち汚すわけにはいかないから。というか、このワンピースは汚してはいけないような気がした。 
 「あっ・・・う」 
 「ほら、下着も」 
 ワンピースの下にあったのは、白地にグレーの縞模様の下着だった。
上下がお揃いなのを見ると、ある程度予期はしていたのだろうか。 
 もう少し大人っぽい物をつけても似合いそうなものだが、
これが真の精一杯なのかもしれない、と思うと、何だか暖かい気分になった。 
 背中に手を回してホックを外すと、真が何か言いたげにモゴモゴとした。 
 「あの・・・ボク」 
 「ぺたんこじゃないのは分かってるよ。大丈夫。これから育つさ」 
 確証は無いが、俺はそう断言した。揉めば大きくなるという俗説が本当かどうかは知らないが、いっぱい揉んでやろう。 
 「はっ・・・恥ずかしいぃ・・・」 
 口でそう言う割には、さっと腕で覆い隠してしまう様子も無い。中々度胸があるな。 
 「・・・可愛いおっぱいだな」 
 いざ目の前にしてみると、このちんまりとしたサイズが何とも真らしい。形もいいし、先端の乳首も綺麗なピンク色だ。 
 興味の湧くままに手を伸ばして、痛くならないようにそっと真の胸を撫でた。 
 キメの細かいすべすべした肌の感触がとにかく心地よい。
その皮膚の下にささやかに、だが確かに存在する柔らかさが霞んでしまうぐらいだった。 

 「ふっ・・・は・・・」 
 呼吸で上下する胸に合わせて、口から吐息に混じった声が滲み出ていた。 
 「痛くないか?」 
 「は、はい・・・けど、くすぐったいような・・・」 
 「ふーん・・・じゃあここはどうだ?」 
 指先を、触れずにいた頂点に這わせて、まだ柔らかい乳首を捏ねた。 
 「ひゃっ!?」 
 一瞬、真の胴がびくっと跳ねた。こね続けると、みるみる内に乳首に血液が集まって硬くなってくる。 
 「あっ・・・ん、ん・・・な、なんか、へ、変な感じ・・・」 
 ふにゃふにゃだった頂点はたちまちコリコリと硬い弾力を得て、圧迫してくる指先にそれを返してくるようになった。 
 「あぁッ、ダ、ダメ・・・変な気持ちになっちゃう・・・」 
 はぁはぁと息を荒げている真に、既にパンパンにふくらんでいる俺のペニスに更に血が集まってしまう。 
 あの真がこんな声を出すなんて。あの真がこんな表情をするなんて。 
 自分がプロデュースしてきたアイドルを抱くという強烈な背徳感すら、最早興奮のスープに注がれるスパイスでしかなかった。 
 胸元から、キュっと引き締まったウエストと細い腰を通過して、右手を真のスラリとした脚へと這わせた。 
 地道なトレーニングを積んできただけあって、真の体躯は全体的に引き締められているが、
さらさらした皮膚の奥からは弾力が力強く跳ね返ってくる。 
 砂浜で話している時に目を奪われてしまった真の脚は、特にその弾力が強い。
身体の内側から瑞々しく張った太腿を、荒い鼻息を抑えようともせずにすりすりと撫で回してしまう。 
 お尻まで掌を這わせてみたが、胸同様にここの肉付きも薄めだった。 
 「あっ、わ、な、なんか・・・凄くエッチ・・・」 
 あからさまに驚く様子の真を見て、そういえば胸をツンツンした事はあっても尻を撫でるなんてしたことが無かったな、
など俺は思い出していた。 
 「やっ!?」 
 太腿の外側を撫でていた手で膝を2,3度往復し、内腿へゆっくりと侵入しようとした所、
勢いよく両脚を閉じられて、ぱちんと皮膚同士が衝突する音がした。 
 微かにだが、カタカタと身体が震えているようだった。 


 「やっぱり、怖いか?」 
 その問いに真は、黙ってこくこくと頷いた。それもそうだろう。痛みを怖がらない人間などいない。 
 「大丈夫だ。怖がること無い」 
 緊張の色を隠せない真を抱き寄せて、あえてキスをせずに頬擦りした。 
 「ん・・・んー・・・」 
 「スキンシップみたいなもんだよ、こういうのは」 
 赤ん坊にしてあげるぐらいに優しく、さらりと指が通る髪を撫でて、背中をぽんぽんと叩いた。 
 と、そこで、俺の左肘を擦る真の左手に気づいた。そういえば、真は脱がしたが俺はまだ全く脱いでいない。 
 もっと直接肌同士で触れ合いたいとも思ったし、身体を離して俺も服を脱ぐことにした。 
 「うあー・・・」 
 ふとシャツを脱ぎ終えた所で真の方を見ると、両手で顔を覆いながらも指の隙間からこちらの様子を伺っていた。 
 男が服を脱ぐ所なんて見てもしょうがない気がするけれど、敢えて何も言わないでおいた。 
 「プロデューサーって・・・たくましいんですね。カッコいいです・・・へへっ」 
 「ん、そうか?・・・ほら、おいで。抱っこしてやるから」 
 はにかむ真を手招きして、お互い背中に手を回して再び抱き合った。 
 「はぁ〜・・・落ち着きますね。なんだろう、この気持ち・・・」 
 こうして、ただ肌を合わせるだけというのも、これはこれで気持ちがいい。ずっとこうしているのも悪くないかもしれない。 
 よしよしと背中を擦っていたその時、
パンツを押し上げるペニスに柔らかいものが触れて、同時にビリリと脊髄を電流が駆け抜けた。 
 どうやら真の内腿に先端が触れたらしく、激しく自己主張するそれの存在を真も悟ったようで、抱きしめた身体が少し強張った。 
 「プ、プロデューサー・・・これって・・・その、男の人のアレ・・・ですよね」 
 「あ、ああ、まあな」 
 「う・・・こんなに・・・大きくなるんですか?」 
 「・・・な、なるさ。男はみんなこうなる」 
 そこまで言うと真は、もじもじしながら俺を見上げた。 
 「さ・・・」 
 「ん?」 
 「触っても・・・いいですか?」 

 「えっ・・・」 
 予想しない言葉が真の口から出てきた。上目遣いでそんな事を言われたら、断れようはずも無い。 
 「・・・いいぞ」 
 俺は真の手を取って、テントを張った場所へと導いて重ねさせた。 
 「わっ!か・・・固い・・・何これ」 
 一枚の薄い布越しに、真の細い指の輪郭が伝わってくる。探るように指が這うと、鈍い快感が腰の奥でくすぶった。 
 「まっ・・・真」 
 ちょっとタンマ、と一言断って、俺は素早くパンツを脱ぎ捨て、また真の手をペニスに重ねさせた。 
 「これ・・・固いだけじゃなくって・・・凄く熱い・・・」 
 声色に好奇心が伺えるように思えた。 
 「うっ」 
 「うわ、今、ビクって・・・」 
 形を確かめるように細い手が性器を握り締めた瞬間、その柔らかさと少しひんやりした温度に、思わずペニスが跳ねてしまった。 
 もしもこのまましごかせたら・・・ 
 「真、そのまま、手を上下に・・・」 
 そう思った瞬間、口から言葉が飛び出していた。 
 「えっ!?は、はい・・・えっと・・・こう、ですか?」 
 訝しげな動きで、ゆっくりと真の手が幹を上下した。 
 「そう・・・もうちょっと強く握って・・・あ、いたた、それは強すぎ」 
 「あ、はい・・・これぐらい・・・かな」 
 知ってか知らずかは分からないが、敏感な先端部分に刺激が集中している。 
 ハジメテの女の子に何をさせているんだ、と思いながらも、ぎこちなさ丸出しの手つきがたまらなく気持ちいい。
顔を真っ赤にして、俺の顔を見ながら時折股間をチラっと見る真の姿も非常に高ポイントだ。 
 「ハァ・・・ハァ・・・」 
 「わ・・・凄い・・・手の中でビクビクって・・・」 
 みるみる内に腰の奥から射精感がこみ上げてきた。
こんなに早いのは我ながらちょっと情けないが、ここで出して終わりにしてはマズい。 
 「もういいよ、ありがとう真。気持ちよかった」 
 「あ、は、はい・・・」 
 「じゃ、次は真の番だな?」 
 「えぇっ・・・うわっ!」 

 真の両肩を掴んで、そっとシーツの海に沈めるように押し倒した。 
 「真、もう一度訊きたい」 
 上から真の目を見つめながら、俺は言った。 
 「俺でいいのか?本当に」 
 「プロデューサー・・・」 
 真は黙って、しかしハッキリと頷いた。 
 「あなたがいい。プロデューサーじゃなきゃ・・・イヤです」 
 そういって真は左手を差し出すと、そっと俺の頬を撫でた。 
 「真・・・」 
 真はこんなにも、俺を慕い、想ってくれている。
あの日以来とにかくストレートに好意をぶつけてくる真の気持ちは俺もよく分かっているつもりだ。 
 ならば、今こそ俺は、俺ができる事をして真の気持ちに応えてやらなくては。 
 「優しくするからな・・・脱がしてもいいか?」 
 「・・・はい」 
 その言葉とほぼ同時に、さっきまでぴっちりと閉じられていた太股が、少しではあるが開かれた。 
 あまり後に引っ張らないように、ささっとショーツを脱がせて、足から抜いた。
薄めではあるが、股の中心に茂みがあるのがはっきりと見えた。 
 「・・・」 
 「ど、どうしたんですか、黙っちゃって」 
 「いや・・・キレイだな、って思ったから」 
 「や、やだなぁもぉ・・・キレイだなんて、そんな・・・」 
 生まれたままの真の姿は、全体的に線の細さが目立つが、
くびれたウエストを境目にした曲線的なシルエットがとても女性らしく、すらりと伸びた両脚が美しかった。 
 同時に、手首のブレスレットと足首のアンクレットが、逃げられないように嵌めた手枷や足枷のように見えて、
愛しい気持ちの中に罪悪感のようなものが込み上げてきてしまった。 
 気を取り直して、内股に手を伸ばして、瑞々しい太腿を撫でさすった。 
 「ふっ・・・あ」 
 真がギュッと目を閉じた。もしかしたら、ここが真の感じ易いポイントなのかもしれない。 
 そう思い内腿からお尻の辺りを集中的に触っていると、真の吐息がどんどん荒くなっていった。 
 「はぁ・・・くうぅっ、う・・・」 
 太腿をさする手はそのままに、真が気を払っていないであろう胸に顔を近づけ、乳首を口に含んで舌先で転がした。 
 「ふあぁっ!?あっ、あ、そこぉ・・・」 
 もう既に固くなっていたそこは、舌を押し返そうとするほどにピンと張り詰めていた。 
 股間に向けていた注意も散ってしまったのか、さっきまでは閉じられ気味だった股が開いていて、
その中心部が露になっているであろう事が分かった。 
 太腿を愛撫するその手を、少しずつその中心部へと近づけていく。 
 「あぁっ・・・はぁ・・・ん、んっ・・・」 
 辿り着いたその先には、既に若干の湿り気を帯びていた。もう一押しという所か。 
 少しだけ滲み出ていた愛液を指先に乗せて、秘裂の外側に塗りつけていった。 
 「あっ・・・!プロデューサー・・・」 
 頬を真っ赤に上気させて、真が荒い吐息混じりに俺を呼んだ。
口が半開きになった隙を狙って、唇を這わせて舌を捻じ込み、熱くなった舌の粘膜同士を絡み合わせた。 
 「んむっ・・・ふ・・・ん、んっ、あん・・・」 
 キスを続けていると、どんどん指先に触れる潤いが増してくるのが分かる。好きなんだな、キスが。 
 だいぶ辺りがぬるぬるになった辺りで、頃合を見計らって俺は唇を話した。 
 「はぁっ・・・はぁっ・・・」 
 「・・・真、そろそろ行くぞ」 
 愛撫をしている間は気にならなかったが、先ほど絶頂寸前まで昇ったこともあり、
俺のペニスも痛いぐらいに勃起してしまっている。 
 覆いかぶさるような体勢を取り、手早くコンドームをセットして、身体の下にいる真を見つめた。 
 「い、いよいよなんですね。ボク、プロデューサーと・・・」 
 「ああ、そうだ。リラックスしろよ。固くなっちゃうと苦しいかもしれないから」 
 言いながら、見当をつけた位置にペニスをあてがって膣口を捜した。 
 「うっ・・・」 
 濡れそぼった粘膜に触れただけで、もうだいぶ危ない。無事に入れた瞬間に射精してしまってはダメだ。 
 「よし、行くぞ」 
 膣口にあてがったペニスを奥へと進めていく。 
 「ふっ・・・う」 
 中へ入ろうとしているものを排除しようとでも言うのか、予想以上に締め付けがキツくて中々奥へと進んでいけない。 

 「くっ・・・力抜け、真っ」 
 「あっ・・・うっく、は、はい・・・」 
 メリメリと音がしそうな程に、半ば無理やりに腰を前へ押し出していく。どうにかこうにか、先端部分は埋まったようだった。 
 あまりにも締め付けが強くて、苦しくなってきた。しかし・・・真はもっと苦しいはず。 
 このままここで留まっているのも辛いだろうと思い、少しかわいそうだが一気に貫いてしまうことにした。 
 「・・・一瞬で済ませるからな」 
 勢いをつけてグッと押し込むと、何かを千切るような感触と共に、ズルッと滑り込むように奥に到達した。 
 「いっ!?うぎぐ・・・くああぁぁぁっっ!!」 
 悲痛な声が身体の下から聞えてきた。周りのシーツを強く引っ張るその手を見るだけでも、かなりの激痛に耐えている事が伺える。 
 もし出来ることなら、その痛みを俺が代わりに背負ってやりたい。 
 「はっ・・・入ったぞ。大丈夫か?」 
 「くぅぅ・・・だ、大丈夫・・・大丈夫・・・です・・・」 
 真の額に浮かんだ脂汗を、指先で拭ってあげた。
同時に真からも手が伸びてきて、額の汗を拭われた時、俺は自分も汗をかいていたことに気が付いた。 
 「ふう、しばらくこのままで・・・どうした?」 
 「うっ・・・うぅ・・・ひっく・・・」 
 力なく腕をシーツの上に落すと、真の瞳から大粒の涙がポロポロと零れ出てきた。 
 「あ、まっ真、ごめんな、やっぱり痛かったよな・・・よく我慢―――」 
 「ちっ、ちが・・・うんです、うっく、そ、そうじゃなぐっでぇ・・・」 
 ギリギリと強い真の膣内の締め付けをこらえながら、俺は嗚咽混じりに声を絞り出す真の次の言葉を待った。 
 「ハァ・・・ハァ・・・う、嬉しいんです、ボク。父さんには男の子として育てられてきたし、
学校でも皆・・・男の子みたいだって。アイドルになっても、王子様って言われたりして」 
 「・・・」 
 「でっでも、今こうして、大好きな人と・・・女の子として一つになれて、ボク」 
 「真」 
 「ボク、本当に、凄く幸せなんです・・・うぐ、えぅ・・・」 
 周りから男の子と間違われてしまう事は、俺が思っていたよりも遥かに、真の心に深い影を落とし続けてきていたようだ。 

 泣きじゃくる真をぐっと抱き寄せて、耳元で「真は女の子だよ」と囁いた。 
 「ん・・・プロデューサー・・・好き・・・」 
 甘えた声で返事が返ってきた。その言葉の響きが切なくて、少し抱擁を強めた。 
 そうして、真が泣き止むまで、赤ん坊にしてやるように身体を揺すってあやし続けた。 
 ふとシーツを見ると、先ほど真が感じたであろう、いや、
今でも感じ続けているかもしれない激痛を象徴するような痛々しい血の赤が転々としていた。 
 「・・・まだ痛いか?」 
 「ん、ちょっと・・・」 
 「もし辛いようなら、これ以上は・・・」 
 「あ、へ、平気です。その、動いても・・・」 
 そう言うと真は自ら、微かにではあるがグリグリと腰を押し付けてきた。 
 「そうか、じゃあゆっくり動くぞ」 
 ストロークを大きくしないよう、奥に入ったまま小刻みに腰を前後させ始めると、刺激に反応するかのように肉壁が蠢いた。 
 「ふ・・・あ」 
 それにしても強烈だ。ゴムごしに伝わってくる温度は暖かいが、
ペニスが千切られてしまうのでは無いかというぐらいにギュウギュウに締め上げてくる。 
 激しく腰を打ちつけたら、決して長持ちしないだろう。
ゆっくりと内部を擦っていてさえ、腰の奥で快感がその重たさを凄いスピードで増していくのだ。 
 「く・・・苦しくないか?」 
 「だっ・・・あ、大丈夫・・・っふ、プロデューサーの、熱くって・・・」 
 「ああ、真の中も、きつくって・・・熱い」 
 お互いがお互いの熱さを感じている。それにも関わらず、もっと熱くなりたいとすら思う。 
 「真っ、もう少し勢いつけるぞっ」 
 「はっ、はいぃ・・・あ、うあ、あぁんっ・・・」 
 グラインドの速度を上げると、奥の締め付けが更に強くなった。
しかし、段々と内部が潤ってきているのか、つっかえる感じはしない。
カリの辺りをゴリゴリと擦られて、電流が腰から脊髄を駆け上って思わずうめき声が出てしまった。 
 「あ、はっ、あ、な、なんか変、変ですっ・・・!」 
 真も次第に痛みが減ってきたのか、首筋までピンク色に染まって、瞳を潤ませている。 
 あの真がこんな表情を、こんな声を出して、あの真を、俺が、俺が抱いている。 
 「うっ!?や、やば・・・」 
 何の前触れも無く強烈な射精感が押し寄せてきて、俺は意識を集中させるべく一旦腰を止めた。
が、ぬめった膣内のヒダが、休憩などさせまいとでも言うかのようにペニスを急かした。 
 くそ、こうなったら突っ走るしかないか。 

 「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」 
 最早俺は何も言わなかった。腰の奥で疼いているだけだったカタマリが、先端へと駆け上っていく。 
 俺はその瞬間を1秒でも先に伸ばそうと思いながらも、真の最奥を擦り続けていた。 
 「う、あぁっ、あ、あ・・・なんか・・・頭がボーッと・・・」 
 真も快感を感じ始めてきたのだろうか、上ずった声をあげた。ずりっずりっと擦れるような音が、段々水っぽさを増してきた。 
 「んんっ、はぁ、ぷ、ぷろでゅーさぁ・・・」 
 シーツを掴んでいた手が、俺の首筋に回ってきた。と同時に、両膝で腰を捕まえられロックされた。 
 生でしているならこの状況はマズイだろうが、ゴムをしている今はその事に用心する必要も無い。 
 とにかく頭の中が真っ白になってしまいそうで、繋ぎとめている理性も崩壊寸前だ。 
 「んっ・・・む・・・く・・・ふ・・・」 
 突然真からキスをされ、思ってもいなかったことに向こうから舌が口内に乱入してきた。 
 テクなど何も無い、乱暴とすら言える衝動がぶつかってくる。なのに、どうしようも無く気持ちいい。 
 「うっ・・・で、でるっ・・・く、うぁ・・・」 
 「んんっ!?う、はぁ、あっ・・・」 
 情熱的に俺の唇を貪る真に、俺はとうとう限界を迎えてしまった。  

 堪えてきた分なのか、激しい勢いで尿道を精液が駆け抜けて行き、先端が爆発しそうだった。 
 一度の発射の度に、頭の中が白くフラッシュし、腰が震える。 
 「あ・・・ビクビクってしてる・・・」 
 真は言いながら、俺にしがみつく足の力を少し強めた。 
 ゴム越しにも伝わってくる熱の中に、このまま溶けていってしまいそうだ。 
 「はぁ・・・なんだか凄くあったかいものが、ボクの、ボクの中に・・・」 
 「・・・へ?中に、って、おかしいな、ちゃんとゴムは・・・」 
 「え、な、何がおかしいんですか?」 
 まるで中に出したかのような真の感想に、俺はまさかと凄まじい悪寒を感じて急いで腰を引き抜いた。 
 「あぁっ!・・・な、無い」 
 本来出したものが溜まっているべき場所に、僅かな雫が残っているばかりでほぼ何も溜まっていなかった。 
 自分で裏筋の辺りに指を這わせてみると、人差し指に白いものが付着していた。 
 これが示すものは・・・一つ。 
 「あ、穴が空いてたのか・・・こ、こりゃマズイ」 
 「ど、どうしたんですか?顔真っ青になっちゃってますよ?」 
 「ゴッゴゴゴゴムに穴が空いてて、お、お前の中に・・・」 
 「へ?じゃぁ、あのあったかいのって、プロデューサーの・・・」 
 「すまない!ごめん!真に何かあったら、俺がどうにか責任取るからっ!」 
 「あっ、そ、そんな、土下座しないで下さいよ!」 
 「で、でも・・・」 
 「えっと・・・大丈夫だと思います。多分もうそろそろ、次のが来るだろうし」 
 最悪のそのまた向こうの状況を思い浮かべて魂が抜け出そうになっていると、真が俺の首筋に抱きついてきた。 
 「プロデューサー、今」 
 「えっ?」 
 「責任取ってくれる、って言いましたよね?」 
 「あ、ああ、言ったような」 
 「やったぁ!」 
 「ぐぇっ、く、苦しい、首を絞めるな、真っ」 


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 次の日、いつも通りの姿に戻り、どこか不自然なガニ股で後ろについてくる真と一緒に、ホテルを出た。 
 「夕方までには東京に戻れるだろうから、事務所に行って俺の車で送るよ」 
 「は、はいい」 
 「おいおい、大丈夫か?歩き方が凄く変だぞ」 
 「だって、なんか股の辺りが・・・」 
 「ああそうか、昨日の・・・」 
 思い出すと顔が熱く火照ってしまう。それは真も同じようで、赤色の見本のような色になって俯いてしまった。 
 「ほら、行こう。駅までもう少しだから」 
 「あっ・・・は、はい!」 
 どうせこの際だ。誰かに見られるかもしれないが、このまま手を繋いで駅まで歩くとしよう。 
  


 終わり 



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