性欲搾取虎の巻

作:名無し

 俺は芸能アイドルのプロデューサーをしている。 
 だから、必然的に可愛い娘と触れ合う機会が多いわけだ。この事実に対して、羨ましい、と思う人も 
いるかもしれない。 
 ところがどっこい、実際んなこたないのである。 
 そも、アイドルは事務所の、……乱暴な言い方になってしまうが、“商品”であるわけだ。 
 その商品を、まさか事務所側から、……こちらも嫌な言い方だが、“キズもの”にしてしまうわけに 
はいかない。 
 なので、“アイドルと担当プロデューサーの恋”なんてものは、“教師と教え子の恋”並にタブーと 
されている。これは別にうちの事務所だけではないだろう。 
 過去にそういう目をくぐり抜けて付き合っていたコンビもいたらしいが、俺にはそんなことをする勇 
気はない。社長に見つかったら即首が飛ぶ。 
 ……そもそもの話、担当してる娘が俺のことを好きになるとは限らないわけだし。 

 閑話休題。 
 俺には悩みがある。 
 最近、俺の担当アイドルが替わった。前に担当していた娘が引退することになって、それに伴って新 
たな娘をプロデュースすることになったのだ。 
 ちなみにその娘は……“娘”と言うには語弊があるが……三浦あずささんという人だ。 
 彼女はとても穏やかな性格で、俺をよく信頼してくれている。それなりに理想のコンビなのではない 
かな、と思っているのだが―― 
 ――なんといいますか。ナイスバディなのです、彼女。 
 特に胸とか胸とか胸とか。無意識のうちに目がいってしまう。 
 その気はなくても下半身が隆起してしまって、非常に困ったりする。 
 そんな誘惑には負けまい、と頑張って仕事に臨んでいるつもりなのだが……もうね、彼女の水着姿とか 
見ると、一瞬でバッキバキになりますよ。 
 我ながら、盛りすぎだろ俺、オナニー覚えた中学生じゃねーんだぞ、と思うのだが、いかんせん本能と 
理性は切り離せない。 
 仕方ないので、性欲解消にと一人空しく自慰にふけったりもした。 
 だが、性欲は一日でリセットされるのだ。今日だけで一生分の精子を出してやらぁあああッ! と頑張 
ったとしても、哀しいかな、俺の精巣は年中無休で勤勉に働いてくれている。 

 そんなわけで俺は非常に困っている。 
 どうにも情けない悩みなのだが……勃起してるところをあずささんに見られたりしたら、下手するとセ 
クハラでクビになりかねない。 
 ゆえに結構切実な問題だったりする。 

 いっそ早起きして朝に一発抜いてから出社すべきか、という生活改善計画を真剣に考慮しはじめた折に、 
とても嬉しい誤算があった。 
 彼女が出来たのだ。 
 無論担当アイドルではない。事務所の同僚の、音無小鳥さんという人だ。 
 職場で仲がよく、俺をいつも優しく気に掛けてくれているので、ずっと惹かれていた。しかし小鳥さんは 
どうも俺のことを友達のようにしか見てくれていないようだったので、所詮は片思いかなぁ……と半ば諦め 
かけていた。 
 のだが、ひょんなことから両思いだったことが分かった。どうやらそう思っていたのは彼女も同じだった 
らしい。 

 俺は小鳥さんのことが好きで、小鳥さんも俺を好きでいてくれる。 
 それからの俺の日常は実に生き生きしたものになった。 

 ――んだが、先の“あずささんに欲情”問題は解決されなかった。そりゃそうだ。 
 小鳥さんとは毎日ヤれるわけではないのである。……こういうと体目当てで付き合っているみたいに思わ 
れるが、それは違うと言い訳しておく。 
 それに、ヤれたところで……やっぱり翌朝には精巣に弾丸がフルリロードされてしまうわけなのだから、 
意味がない。 
 嗚呼、哀しいかな、日々の循環。 
 結果俺はこれまで以上に悩むことになった。 
 じゃあ今まで通りオナれって? ……彼女持ちなのに自慰行為に励めって言うのか? そんな情けないこ 
とするくらいなら自殺するわ。 

■ 

 ところが、そうやって悶々と過ごしていたある日―― 
 なまじ付き合いが長いから、分かってしまうものなのだろうか。 
 小鳥さんにこんなことを言われた。 
「……プロデューサーさん。あずささんに、ときめいちゃったりしてませんか?」 
「え゛っ」 
 ちなみに時は昼休み。休憩室で、二人で昼食を食べていたときのことである。 
「いや。そんなことないです。本当です。俺は小鳥さん一筋です」 
「……その割には、あずささんといるとき、やたら視線が泳いでるように見えるんですけど……」 
 じ〜っと、目を細くして俺を見る小鳥さん。なんだか刺々しい。 
 うう、やっぱり分かるもんなのか。 
 ……言い訳しないほうがいい。俺はそう思った。 
 こういう場合、正直に言ってしまったほうがいい。下手な嘘をついてせっかくの小鳥さんとの関係を壊した 
くない。 
 嫉妬している小鳥さんというのはなかなか可愛らしい画ではあるのだが、変な誤解を受けるのは嫌だからな。 
「確かに、そのとおりです。……でも、言い訳させてもらってもいいですか? その、あずささんってすごく、 
プロポーションいいじゃないですか。美人ですし。……ああいやいや、決して小鳥さんがそれに劣っているわ 
けではなくてですね、いえ実際小鳥さんの素晴らしさは神レベルです」 
 ……ジト目で睨まれた。嘘くさく思われたのだろうか。大分本心なんだけどなぁ。 
 こほん、と咳払いして俺は続ける。 
「んー……これは俺だけでなくて、男性全体がそうである、と思ってもらいたいのですが……“その気”がな 
くても、魅力的な女性が目の前にいると挙動不審になってしまうものなんです。なんというか、本能みたいな 
もので」 
「…………。男の人がそういう風になるのは、分からなくはないですけど……」 
 やはり多少は理解してくれているらしい。しかし、まだ彼女は不服そうだ。 
「――俺の心に決めた人は小鳥さんただ一人です。何ならあの窓から、小鳥さんへの愛を20×20マスの原稿 
用紙百枚分、語ってみせましょうか!」 
 割と本気な俺。小鳥さんへの想いは嘘ではない。 
「むー。いいです、分かりました……仕方ないですね」 
 言葉は納得した風ではあるが、やっぱり彼女は納得いかなさそうだった。 
 唇を尖らせた表情が何とも可愛らしい。 
 しかし、うーん。小鳥さんの気持ちに立ってみれば、やっぱり好きな人が別の人に性的興奮を覚えてるって 
のは、嫌だろうなぁ。 
 でもなぁ…… 
「こればっかりは仕方ないんです……分かってください。半ば、男としてのアイデンティティなんです。 
……でも、俺は絶対に小鳥さんを幸せにしますから!」 
「…………」 
 力説したのだが、小鳥さんの反応が芳しくない。 
「私がプロデューサーさんのアイドルだったらなぁ……」 
 ぽつりと小鳥さんが言った。 
(……いや、それは無理かと) 
 俺は内心で突っ込んだ。 

 ……やっぱり早起きオナニー計画を始動させたほうがいいんだろうか……。 
 俺は情けない決意を固めるのであった。 

■ 

 翌日。 
 その日はあずささんのライブ衣装を決める日だった。なので、事務所内だというのに非常に肌の露出の多いあ 
ずささんを見ることになってしまった。 
 昨日今日だったので、さすがにフル勃起は気力で阻止した。……実際は半勃ちなんだが、アウトかセーフで言 
ったらファールくらいだろう。だからOK。 
 しかしムラムラする心は抑えきれない。衣装合わせが終わると俺は無理矢理あずささんに休憩を取らせて、興奮 
を静めるためにその場から逃げ出した。いっそトイレにでも駆け込んだろか。 

 と、そんなときのことだった。 
「プロデューサーさん!」 
「は、はい、どうしました小鳥さん?」 
 我心得たり、といった顔つきで小鳥さんが俺のところへとやってきた。 
「話は聞いています。――あずささんの衣装合わせだったんですよね?」 
「うっ……そうです」 
 どうも気まずい俺。すいません昨日は生意気言ってました……。 
「私、いいこと思いついたんです。……ちょっとこっちに来てください」 
「え? は、はい……」 
 言われるままに、手を引っ張られて彼女について行く俺。 

「……って、ここ女子トイレじゃないですかっ!」 
「えぇ。色々考えたけど、ここが一番安全そうでしたから」 
“安全”ってなんですか安全って。 
 トイレの中と、その周辺に誰もいないことを確認してから、俺を強引に引っ張り入れる小鳥さん。 
 ……女子トイレの中なんて初めて入った。男子トイレより綺麗なのは気のせいだろうか……。 
 小鳥さんはつかつかと歩き、一番奥の個室に俺を連れて行く。 
 そして、狭い個室に二人でこもり、かちり、と鍵をかける。 
「……あのー。小鳥さん、何をってうぉあッ!」 
 詳細を聞く前に、小鳥さんは俺の前に屈みこみ、ズボンのベルトを外しにかかった。 
 っつーか何! 何なんですか! 
「私、あれから一晩考えたんです……」 
 抵抗したいのだが、狭い個室内、自由に動けない。それに、小鳥さんはドアに背中をくっつけて立っているため、 
脱出するには彼女を押しのけなければならない。 
「……プロデューサーさんの言ってることは、分かります。だけど、私、悔しいんです。……でも私はアイドルに 
はなれません。だからっ!」 
 じじじじじ、とジッパーを下ろす小鳥さん。 
「プロデューサーさんをスッキリさせちゃえば、……あずささんにときめいちゃったり、しませんよね!」 
 ど、どういうことだ……? 
 俺は、今しがた小鳥さんが行っている行為と、言葉から今後の展開を推測する。 
 ま、まさか…… 
「……むー。やっぱり、少しおっきくなってますね」 
 小鳥さんが俺のズボンを下ろし、トランクスを見ながら言った。 
「いやいや、小鳥さん、それはさすがにまず、」 
 と、突然小鳥さんが、俺に向けて人差し指を立てた。 
 何が? ととりあえず口を閉ざすと……なんと、入り口のドアの開く音がする。 
『……あら〜? 今、何か声がしたような……』 
 しかも入ってきたのはあずささんだっ!? 
 ……しばらくしてから、個室のドアが閉まる音がする。音の近さからして、俺たちがいる部屋の隣だ。 
 どうする俺! これじゃ脱出もできないし、下手に抵抗して変な音を立てたら見つかってしまう! 
「ふふ、そんなわけで……私に、プロデューサーさんをスッキリさせてください」 
 と、小声で言うと、小鳥さんはトランクスの前からペニスを引っ張り出した。 

「……う、」 
 外気に晒される。 
「……ふっ」 
 俺の前に屈んだ小鳥さんが、ペニスに温かい吐息を吹きかけた。 
 途端に、むくむくと大きくなるペニス。元々半勃ちだったこともあり、あっという間に反り返るほどに立ち上が 
っていた。 
「ふふ……相変わらず、おっきいですね……」 
 言いながら、右手でペニスの全体をなで回す。 
「とっても赤くて……血管がぴくぴくって、してます」 
 小声で、まるでペニスに向けて話しかけているように小鳥さんは呟く。 
 どこか艶やかな息づかいと、冷たく柔らかい指の感触が重なり、俺はそれだけで射精しそうになってしまう。 
 ……理性は、駄目だ駄目だと叫んでいる。この状況はヤバイ。引きずり込んだのは小鳥さんだが、着いてきたのは 
俺なのだ。 
 今すぐこっそりとトイレから出るべきではないのか…… 
「ん、ぅ……っ!」 
 思考が中断され、思わず声が出た。 
 小鳥さんが、舌で裏筋を舐めあげたからだ。 
「れ、ろぉーん……あ、気持ちよさそうな顔……」 
 小鳥さんが俺の顔を見て、悪戯に笑う。 
 そのときも、彼女の右手は常にペニスをなで回している。 
「……あ。なんか、透明なお汁、出てきましたね」 
 彼女は指先で尿道をつつく。……我慢汁が、糸を引いていた。 
「うふふ、いっぱい、感じてくださいね……」 
 そう言うと、 
 彼女は、ぱっくりと俺のペニスをくわえ込んだ。 
「あ。ぅ……っ!」 
 声を抑えられなかった。必死に拳を握り唇を噛んで、快楽に耐えた。 
「ん……ちゅ、はむ……」 
 亀頭が小鳥さんの口に包まれる。彼女の口内はどろどろで、熱い。 
 俺のたった一部分だけをくわえられているだけなのに、彼女に体全体を包まれているような気さえした。 
「は、ぁ……ん、れろ、れろ……」 
「……っっ!」 
 口の中で、尿道に沿って舌が動く。瞬間、体全体に電流が走ったような、鋭い快感を覚えた。 
 息が漏れる。まともに立っていられない。 
 まだこれだけだというのに、もう爆発しそうなほどに高ぶっている。 
「ん、ん……っ」 
 小鳥さんが、更に奥までペニスを口に入れた。半分以上が彼女の中に飲み込まれる。 
「ん……ちゅ、ん、は、ん……」 
 そのまま、ゆっくりと彼女は頭を前後に動かし始めた。 
「は、つ……っ」 
 視界が白くなってくる。さすがに膣より刺激は薄いが、快感が薄いわけではない。 
 彼女の柔らかい唇と舌が、俺の弱いところを、意志を持って責めてくるのだ。 
 それに視覚効果もある。可愛らしい小鳥さんの顔を、俺の汚らしいモノで蹂躙しているのだ。興奮しないわけがない。 
「ちゅぱ、……ちゅ、ぱっ、はぁ、んっ、」 
 だんだん、口がペニスを往復する速度が早くなってきている。 
 その動きに応じるようにして、舌も絶えず俺の亀頭をなで回していた。亀頭への刺激は、ぴりぴりとしびれるような 
快楽をもたらす。 
 ペニスで感じる彼女の口内は、唾液と俺自身の体液でどろどろだ。もう何が何だか分からない。 
 もはや、快楽を感じすぎて、ペニスに感覚がない。まるで下半身が溶けてしまったかのようだ。 
 個室内にいやらしい水音が響く。 
 唾液が肉棒をつたい、床にこぼれ落ちる。 
 熱い。精液が尿道をせり上がってくる。 
 理性が、トぶ。 

「……っっっっ!」 
 頭の中で閃光が弾けた。 
 射精の瞬間、俺は小鳥さんの頭をぐっと掴んで、自分の腰へ引き寄せた。 
「……! っ!」 
 彼女が驚いたように抵抗したが、俺は離さなかった。 
 ペニスを深く彼女の口へ差し込み、そして咽喉に直接精液を流し込む。 
 ……征服欲が満たされる。俺の欲望で、彼女を文字通り中まで犯しているのだ。 
 射精は長かった。溜っていたせいもあるのだろう。 
 たっぷり三十秒は、小鳥さんの中に精液をはき出し続けていた。 

「……っ」 
 ――射精が終わると、ふと我に返った。 
「わ、わわわっ!」 
 俺は慌てて小鳥さんの頭を離した。 
「げほ、げほげほっ!」 
 すぐに小鳥さんは激しく咳き込んだ。 
「だだ、大丈夫ですかっ!?」 
 彼女はペニスで口を塞がれながら、いきなり喉の奥に精液を流し込まれたのだ。下手をすれば、喉に絡まって窒息し 
てしまうことだって……! 
「げほ、ごほっ……はぁ、はあ……」 
 涙目になりながら、小鳥さんは呼吸を荒げて俺を見上げた。 
「は、……うう、酷いです……こほっ」 
「あ、あれ? 小鳥さん、その……俺が出したやつは?」 
「……苦しかったから、飲んじゃいました」 
 飲んだ? アレを? 
 ……ものすごい申し訳なさを感じた。 
「苦くて、濃くて……ほんとうに窒息するかと思っちゃいました」 
「す、すいません……」 
 しかし、その言葉とは裏腹に、小鳥さんの表情は穏やかだった。目を細め、どこか嬉しそうな表情をしている。 
「気持ちよかったですか……?」 
 こくんと首をかしげて、上目遣いに聞いてくる小鳥さん。なんつーか、フェラされたあとにそういうことを聞かれる 
のは、殺人的ないじらしさだった。 
「……はい」 
 気持ちよかった。最高に気持ちよかった。死ぬかと思った。 
 気持ちよすぎて、見事に理性を失わされてしまった。夢中になって周りのことも分からなくなったし―― 
 ――って! 周りのこと!? 
「わわ、ここ、小鳥さんっ! とと、隣、隣っ!」 
 小鳥さんは、あ、しまった、という顔をした。 
 二人で慌てて口を閉じた。が、もう手遅れだろう。 
 うう、俺は女子トイレで変態行為に及んでいたとして、クビにされてしまうんだろうか…… 
 と、落ち込みかけたそのとき、 
「……すぅ……むにゃ……ん、はぁ……もう、食べられません……」 
 そんな穏やかな声が聞こえた。 
 声というか、……寝息? 
「……………………寝てる?」 
「みたいですね」 
 はぁぁ、と脱力する。 
 というかトイレで寝るって、あずささん……。いや助かったんですけど。 

「こほ、こほ……ふぅ。じゃあ、もう少しくらい、いけるかな?」 
「はい……はい?」 
 いまだ涙目な小鳥さんだが、そう言うやいなや、再び俺のペニスをぱっくりとくわえこんだ。 
「ちょ、って、あの、俺、さっきイったばっかで……」 
「へも、ひっはいはへひゃはははひはふはっはいはふほへ?」 
“でも、一回だけじゃまた出したくなっちゃいますよね”……だろうか。 
 口の中でもごもご話されると、それが良い具合に刺激となった。ただでさえ射精したばかりで敏感なペニスは、再び 
活力を取り戻していく。 
「いや、というか連続二回はさすがに。小鳥さんだって疲れますよね?」 
「ん、ぷはぁ……大丈夫です。愛する彼氏が、浮気しないためですからっ!」 
 頬を染めて言う小鳥さん。そういう台詞は手コキしながら言うもんじゃありませんよっ!? 
「まだ隣にあずささんがいるみたいですから、おっきな声出したら起きちゃうかもしれませんよ?」 
 脅迫だっ!? 
 しかし体は正直で無情である。小鳥さんの柔らかな指に撫でられ、ペニスはいつの間にかがちんがちんになって 
いた。 
 まさか……彼女なりの無言の仕返しなんだろうか、これ……。 
「さ、プロデューサーさん、いっぱい出しちゃってくださいね!」 
 小鳥さんは天使のスマイル。 
「いやああああ――っ!!」 
 俺断末魔の叫び。 

■ 

「……ごめんなさ〜い、プロデューサーさん。なんか私、トイレで寝ちゃったみたいで……」 
 あずささんが走りながら会議室に入ってきた。本当に寝ていたのだろう、どこかまぶたが重そうだった。 
 衣装合わせは終えたので、あとはライブの詳細の打ち合わせである。 
「あら? あの、プロデューサーさん、なんだか顔色が悪いですよ〜?」 
「え? あ、はは。そんなことないですよ」 
「そうですか? なんだかすごく疲れてるみたい……ちゃんとお休みはとってくださいね?」 
「はい。分かってますよ、ははは……」 

 ――連続で三回も絞られりゃ、そりゃ顔色も悪くなるだろうなぁ……。 
 俺は内心そう思った。 
 ――まぁ、確かに欲情したくたってできないな、これは。 
 あずささんを前にして、微塵も体が反応しないのは貴重な体験だった。 

 ちなみに小鳥さんは、今何事もなかったかのように仕事をしている。 
 ――女ってすげぇ。 
 しみじみと思った。 

 その日の会議は驚くほどスムーズに進んだ。 



■ 

 ……そして。 
 その後一年もしないうちに、アイドル“三浦あずさ”は頂点、Aランクへと上り詰めた。 
 しかし。その成功の裏には、彼女のプロデューサーの悩みと、それをサポートした一人の事務員の努力があった 
事実を誰も知らない。 

 ……その事務員の肌がだんだん綺麗になっていった理由も、彼ら以外は、誰も。 








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