やよい、初体験

作:名無し

 765プロダクション。 
 オフィスを抜け、廊下をまっすぐ進み、突き当りを右に曲がったところにある一室。 
 なんてことはない。ただのトイレである。 
 そんななんてことはないトイレ、そのうちの左側。 
 赤い人間のマークが描かれたドアを開け、その中のさらに奥から二番目のドア。 
 ひとつだけ閉められたドアの向こう側から、カタンと便座を上げる音がした。 

「んしょ……」 
 小さく声を漏らしながらデニム生地のスカートをたくし上げると、 
やよいは下着を膝元までずり下げゆっくりと腰を下ろした。 
 洋式の便器に腰をかけると、太ももの裏側にひんやりとした感触。 
 思わず身震いをしてしまった。 

 用を足し終え、からからとトイレットペーパーを巻き取ると、湿ったそこを綺麗に拭く。 
 汚れたトイレットペーパーを便器の中に放り込んでから、彼女は大きくため息をついた。 
 気が重い。その理由は、今朝の出来事にあった。 
 いつも通り、朝の事務所にやってきたときに、やよいの目に入ってきたもの。 
(小鳥さんとプロデューサー、なに話してたのかな) 
 小鳥の手から、彼の手に渡された紙袋。何が入っているのかは分からない。 
 そしてプロデューサーの笑顔が彼女に向けられ、小鳥もまた彼に笑顔を返していた。 
 彼と事務所の女の人が仲良く話しているのは、よくある光景だ。 
 よくある光景なのだけれど……。 

「んぅ……」 
 気になる。大人の男の人と、女の人。 
 コイビト同士……なのかな。そう思ってから、やよいはふるふると頭を振った。 
 事務所のみんなが仲良しなのは嬉しいことだけど、でも、プロデューサーと仲良しなのは自分がいい。 
 すごくわがままなことは分かっていたけれど、それでもどうやったってそう思えてしまうのだ。 
 もしもふたりが付き合っていたとしたら……考えただけで、きゅっと胸が痛む。 

(プロデューサー……) 
 手が、足の間にもぐりこむ。 
 どうしてそうしようと思ったのか、自分でも分からない。 
 この、悲しいような苦しいような気持ちが、自然とその手を、むき出しだったその場へと導いた。 
「……っ」 
 指先に、突起が触れる。冷たい指先に、体が震えた。 
 わずかに中指を動かすと、弱い電流が走るような感覚を覚える。 
「ん……っはぁ」 
 熱を帯びた吐息が漏れる。 
 円を描くように小刻みに指を揺らすと、その電流は徐々に強さを増していく。 
 気のせいか、指先に触れる突起が、徐々に硬くなっている気がする。 

(なんか……ヘン……かも) 
 自己主張を始めたそれは、自分の指から伝わる振動を、より敏感に感じ取る。 
 思わずきゅっと太ももを閉じるが、どうしてか中指の動きは止まらない。 
「んっ、はぁ……ぅっく」 
 もっと、もっと強い刺激が欲しい。 
 自分の脳の奥からそんな声がして、やよいは手の動きを速める。 
「ぁ……ぅん、ふっ……」 
 荒くなっていく息に声が混じる。 
 人差し指と薬指でその場所を押し広げると、中指の腹を使ってさらに中心部を圧迫していく。 
 気持ちいい……のかはよく分からないけれど、こみ上げてくる何かを逃したくないと思った。 
 腕の筋肉が疲れてきた。それでも手は止まらない。 

「んっ…………ぅあ、もっと……」 
 なんだかものすごくイケないことをしているような気がしてきて、やよいは目を閉じた。 
 こんなところ、こんな風に触るような場所じゃない……はずなのに。 
「ぅん……っ、プロデュ……サー……!」 
 なんで彼の名前を呼んだのだろう。 
 無意識のうちに口から漏れたその名前に反応するように、指先と太ももの内側に力がこもった。 
(な、なにか……くるッ……!) 
 お腹の奥から、頭のてっぺんから、足の先から。 
 全身にしびれる様な刺激が走り、やがてそれは、自分の指が触れるその場所へと集まり―― 

「っあ……ん、ん、っく……んぁあッ……!」 
 ひときわ高い声が漏れて、やよいの全身が小さく痙攣した。 
「はぁ……は……ふっ……」 
 荒い息をつきながら、ぐったりと頭を垂れる。 
 全身の痙攣が治まっても、今まで触れていたそこだけは、ピクピクと今なお震えている。 
「なんで……わたし、こんな……こと」 
 右手を見る。中指の腹が、湿っている。 
 鼻先に近づけてみると、なんだか独特の香りがした。 

「……ん?」 
 くんくんと鼻を揺らしていると、やよいはふいに違和感を覚えた。 
 なんだかおかしい。その、足の間が。 
 恐る恐る先ほどと同じように足の間に手をもぐりこませる。 
 さっきまで触れていた突起の……さらにその奥。 

「――え、えぇぇえええっ!?」 
 な、な、な、な、なんで!? 
 火照った顔から、一気に血の気が引いていく。 
(ぬ、ぬるぬるっ……!?) 
 ちょっと触れただけでも分かる。 
 明らかにその場所が、ぬるぬるに濡れている。 
 指先に目をやると、ぬらぬらと糸を引くそれが中指にまとわりついていた。 
「あわわわ、こ、これ、おしっこ!?」 
 でも、おしっこはさっきしたばっかり。 
 というか、こんなぬるぬるのおしっこなんて出たことない。 
 バクバクと心臓が高鳴る。 

「どどどどうしよう、私、病気かもしれない!?」 
 どうしよう、どうすればいい。 
 誰かに相談を……そこまで考えてプロデューサーの顔が浮かぶ。 
 そうだ、プロデューサーならきっと何とかして――と、やよいははっとした。 
「で、でも、プロデューサーになんて言えば……」 
 トイレに行って、夢中でココをいじってたら、変な病気になっちゃいましたぁ! 
 そんなこと言えるはずがない。 
「じゃ、じゃあ、誰に――あ、そうだっ!」 
 大人で、ちょっと恥ずかしい相談でもきっと真剣に聞いてくれる人。 
 ひとり、ぴったりの人がいる。 
 やよいは大慌てで下着をはくと、トイレのレバーを引いて個室を飛び出した。 



 その後、真剣な眼差しでやよいにコトを相談された小鳥は、目を泳がせながら 
それは病気ではないということ、その行為は悪いことではないけれど、 
あまり事務所ではしないように、というふたつのアドバイスをした。 

 まさか自分の約半分しか生きていない子までもがライバルになっているとは。 
 よかったぁ、と笑顔を見せるやよいを見て、小鳥は思わず苦笑するのだった。 


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